盗まれた文化財がオークションで…ホットスポット欧州の事情

パンドラ作戦で回収された文化財|Europol

 文化的価値の高い美術品などがオークションで高値で取引されているが、そのなかには盗品があることも事実だ。なかでもヨーロッパは窃盗犯の主要なターゲットとなっており、毎年大量の文化財が盗まれ行方がわからなくなっている。

◆欧州で文化財盗難が多発 目的は売買
 2022年に発表された『文化財に対する犯罪の評価』という国際刑事警察機構(ICPO)の年次報告書によれば、2021年には調査対象となった74ヶ国で約2万3000点の盗難が報告されているという。盗難のほとんどは欧州で起きており、欧州諸国のICPO国内中央局の報告では、記録された盗難総数の78%にあたる約1万8000点が紛失となっている。

 行方不明の文化財は、しばしば市場で発見される。欧州では、出所を隠すためのマネーロンダリングならぬ盗品洗浄も行われており、これが盗品の流通を可能にしている。2013年にイタリア北部ピエモンテ州の城からルティリオ・マネッティ作の絵画『La Cattura di San Pietro』が盗まれたが、この事件について現在の所有者である政治家のヴィットリオ・スガルビ氏が疑惑の人物となっている。

 ガーディアン紙によれば、盗難が起きる数週間前に、スガルビ氏の友人が城を訪れ、問題の絵の購入について問い合わせていたという。絵はキャンバスが額縁から切り取られた形で盗まれており、ある業者は数ヶ月後に何者かがその絵の修復を依頼してきたと認めている。しかし、絵は2019年にほかの業者に持ち込まれ、その際に左上の隅にロウソクの絵が追加されたという。これにより、盗品であることがわからなくなったと言われている。

 スガルビ氏は2021年に『La Cattura di San Pietro』を展覧会に出しているが、これは母親が購入した別荘を修復中に見つけたものだと説明。自分の絵がオリジナルで、盗まれた作品は贋作(がんさく)だと主張している。現在スガルビ氏は、盗品洗浄の疑いで捜査を受けているということだ。

Text by 山川 真智子