ロック界にもキャンセル・カルチャーの波 業界人発言や過去の名曲にも

左からロニー・ウッド、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ(9月6日)|Scott Garfitt / Invision / AP

 多様性が重んじられる近年、特に若い世代の間で人種やジェンダーについての差別的な考え方が問題視されるようになった。ロック界でも、古参の業界人の個人的意見や、べテラン・バンドの過去の楽曲にも厳しい目が向けられており、若いオーディエンスへの対応を迫られる時代となっている。

◆黒人と女性を軽視 ローリング・ストーン誌の共同創刊者に批判
 米情報誌ローリング・ストーンの共同創刊者、そして「ロックの殿堂」の共同創始者でもあるヤン・ウェナー氏が、黒人や女性ミュージシャンについて物議を醸す発言をしたことで、最近大炎上した。

 ウェナー氏は白人男性ミュージシャンへのインタビューをメインにした自身の新著『The Masters(ザ・マスターズ)』の宣伝のため、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)の取材を受けた。そのなかで、なぜ女性や黒人のミュージシャンにはインタビューしなかったのかと尋ねられ、彼らが自分の考えるマスター(匠)に合致しなかったという旨の発言をした。例として、ジョニ・ミッチェルやスティービー・ワンダーなどの名前を挙げていた。

 ウェナー氏のコメントは批判され、記事掲載の翌日に、ロックの殿堂財団はウェナー氏の理事の職を解くと発表した。ウェナー氏側は、黒人および女性アーティストの貢献、天賦の才、影響力を矮小化するような発言をしたと述べ、深く謝罪し結果を受け入れると述べた。

Text by 山川 真智子