なぜアート作品を上場? 株式市場を開設した企業の狙いとは

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◆芸術作品を個人から解放
 アーテックスのCEO、ヤシール・ベンジュルン・トゥイミ(Yassir Benjelloun-Touimi)は、3.2兆ドルのグローバルなアート市場の内、1.8兆ドルが個人所蔵、1.2兆ドルが美術館に所有されていると語る。これは、世界の金資産の3分の1に相当する規模のアセットクラスだが、年間で取引されるのはたったの2%にとどまっているとのことだ。つまり、流動性がないというのがこのアセットクラスの課題だ。また、現状のオークションという取引市場は、限られた人しか参加することができず、きちんと規制されている市場ではなかった。だからこそ、統制されており、透明性が高く、民主化された株式市場での芸術作品の取引を実現させるのだという。

 芸術作品を所有する個人にとって、アーテックスを通じた上場は、費用を抑えて作品を売るというメリットがある。一般的なオークションでは20%の取引手数料が発生するのに対し、アーテックスの手数料は3%だ。また、芸術作品が個人所有から公開市場に出て、美術館などで展示されることによって、より多くの人が芸術作品を楽しむことができる。

 有名な芸術作品は、上場段階でその価値はほぼ最高値に達しているため、投資家にとってのアップサイドが期待できないとする声もあるようだが、アーテックスは、先の数ヶ月間、約10億ドル相当の芸術作品を上場させるとの意気込みを見せている。

Text by MAKI NAKATA