なぜアメリカで野球の人気は下がってきているのか 「好きなスポーツ」は11%、観客減

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◆若年層の支持は7% スター不在で注目浴びづらく
 課題は若年層へのPRだ。前出のワシントン・ポスト紙の調査によると、特に30歳未満に絞った場合、好きなスポーツに野球を挙げた人は7%に過ぎない。親世代が野球好きだったとしても、その趣向は必ずしも若い世代に受け継がれていないようだ。

 ハーバード大学のニュースサイトであるハーバード・ガゼット(2022年10月18日)も、若いファン層の獲得が課題だと指摘している。爆発的人気を誇るスター選手がいないことがプロモーションを難しくしている要因の一つだ。エンゼルス大谷選手などが脚光を浴びているものの、サッカーやバスケに比べると、やはり熱狂的な人気を誇る選手が生まれにくい現状がある、と同サイトは指摘している。

◆若者はスローペースを敬遠している? ルール改変で巻き返しなるか
 野球は歴史的に愛されてきたスポーツでありながら、なぜ近年では若者の心に届きづらくなってしまったのだろうか。CNNは、アメリカンフットボールのNFLやバスケットボールのNBAなどの試合がテレビ放送されるようになるにつれ、徐々に若者の関心を引けなくなってきたと分析している。若い世代には試合のペースが遅く感じられ、フィジカルな身体のコンタクトも少ないため、視覚的興奮の面で他競技よりも不利になっているようだ。

 ハーバード・ビジネス・スクールのスティーブン・A・グレイサー教授は、ハーバード・ガゼットに対し、「特に知識のあるファンにとっては、遅くてつまらないというわけではありません」と述べ、コアなファンは試合のペースに満足しているとの見方を示している。ただし教授は、若年層への訴求には向いていないとも指摘する。興奮を生む走者一掃のツーベースヒットなど、戦略的に重要な攻撃の瞬間は限られており、三振に終わったりただ進塁したりする時間が長いとの指摘だ。「このペースでは、より行動的な若い層を引きつけることはできないのです」。

 MLBでは試合をスピーディーに進行するため、各種ルールを変更してきた。今年は、ピッチャーが走者なしの場合は15秒、走者ありの場合は20秒以内に投球動作を始めないとボールを宣告する「ピッチクロック」を新規導入する。スピードアップで人気回復につなげることができるだろうか。

Text by 青葉やまと