砂漠の「まだ存在しない」町、冬季アジア大会開催地に 29年にサウジの未来都市NEOMで

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◆強制退去に抵抗した人に死刑判決
 ユーロスポーツ(10/6)によれば、ネオムの建設はまだだが、建設予定地周辺の部族の集落はすでに立ち退きを迫られ、岩の破砕などが始まっている模様だ。フランスで多くの政治家が、到底エコ・レスポンシブル(環境への責任)なプロジェクトとは言えないと批判している。

 しかも、立ち退き命令に抵抗していた部族のうち1人は2020年に射殺され、そのほかの逮捕者3名には今月頭、死刑が宣告された(ミドル・イースト・アイ、10/7)。このような非人道的で強引な進め方を見ると、ネオムの建設が始まれば、サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会のスタジアム建設時のように、出稼ぎ労働者に犠牲者が可能性もある。

◆当事者である日本のだんまりの奇異
 アジア冬季競技大会のネオムでの開催を容認することは、これらの環境的および人道的問題に目をつむることになる。欧州で非難の声が止まないのはそれが理由だ。それなのに、当事者であり、アジア諸国のうち最も西洋に近い価値観を持つ日本で、批判の声が聞こえてこないのは奇異に思える。

 アジア冬季競技大会はこれまで8回開催されており、そのうち4回は日本が開催地となっているが、2029年に関しては、サウジアラビア以外に立候補した国はなかったという。大規模なスポーツ大会が相当な資金を必要とすることを思えば、二の足を踏む国が多いのは無理もない。しかも冬季競技に適した気候の国はアジアには限られている。

 国際オリンピック委員会(IOC)は、今回のアジアオリンピック評議会の決定について、「なんらの相談も受けておらず、意思決定プロセスには関与していない」と発表し、IOCは既存の施設利用を優先させる考えを持っていると主張している(レキップ誌、10/5)。

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Text by 冠ゆき