砂漠の「まだ存在しない」町、冬季アジア大会開催地に 29年にサウジの未来都市NEOMで

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 アジアオリンピック評議会は10月4日、2029年のアジア冬季競技大会開催地をサウジアラビアのネオムに決定した。その直後からSNSをはじめメディアにこの決定を糾弾する声が溢れている。それはなぜか?

◆未来都市ネオム
 ネオム(NEOM)とは、サウジアラビアが2017年にその計画を発表した、予算5000億ドル(約74兆円)の未来志向人工都市だ。場所は同国北西部の紅海に面する約2万6500平方キロメートルの地域となる予定だ。その面積はサウジアラビアの国土の80分の1にも満たないが、四国の約1.4倍にあたり、相当な規模であることが想像できる。

 ネオムに建設が予定されているプロジェクトは現在3つ。砂漠の未来都市「ライン(The Line)」、山岳のリゾート地「トロヘナ(Trojena)」、水上に浮遊する工業都市「オキサゴン(Oxagon)」だ。

 ラインは、幅200メートル、長さ170キロメートルの細長い形で、外壁が鏡で覆われた「都市」だ。車や道路は存在せず、区分ごとに必要な都市機能が備わっているため、徒歩5分以内ですべての施設にアクセスできる。地下に備わる高速鉄道を使えば、端から端まで170キロの距離も20分で移動できる。一年中快適な気候に調節された内部には、900万人の居住が可能とされている。また、アカバ湾沿岸から50キロ内陸に入った山岳地帯に建設が予定されているトロヘナには、一年中楽しめるスキー場、人工の淡水湖、高級ホテルに別荘、マンションなどが誕生することになっている(ル・モンド紙、10/4)。

 これらネオムの計画都市では、食料は自給自足が可能で、供給されるエネルギーも100%再生可能なものだとサウジアラビアは謳っている(レ・ゼコー紙、7/26)。

Text by 冠ゆき