妻への愛からであっても…ウィル・スミスが米国で非難される理由
◆女性は所有物ではない 愛よりもエゴ
APは、今回の事件は黒人にとって平手打ちや侮辱以上のものであったと述べ、黒人男性が黒人女性を公の場で守る適切な方法についての議論を巻き起こしたと述べる。
バルーク大学のシェリー・エバーズリー教授は、「俺の妻の名前を口にするな」というスミスがロックに発した言葉から、本当に動機が愛だったのか疑問を抱いたとする。歴史的に奴隷制度のもと黒人女性は財産として扱われてきた。黒人社会にはジェンダーによる役割があり、男性は差別のある社会の中で配偶者の名誉を守れと教えられて育ってきたと同氏は解説する。しかしいまの時代に「俺の妻」という財産所有の論理で平手打ちに出たスミスの行動は、黒人女性を守る正しい方法として喝采されるよりも、抑制されないエゴが招いたと非難される可能性が高いと指摘している。(AP)
ジム・キャリーが「ジェイダはタフな女性だ。自分で自分を守れるし、彼女が肉体的攻撃を受けたわけでもなかった」と指摘しているが、スミスの妻ジェイダ・ピンケットは女優、歌手、プロデューサーなどの肩書を持つ、自立した女性だ。エバーズリー氏は、スミスはまるで彼女が声も出せず行動もできない女性であるかのように扱ったとし、それが称賛されるべきという考え方は問題だと述べている(AP)。
◆黒人社会に迷惑 ステレオタイプ助長
バスケットボール界のレジェンド、カリーム・アブドゥル・ジャバー氏は、今回の事件で黒人に対するステレオタイプが強まることを懸念している。同氏はニュースレターサービスSubstackのコラムで「不機嫌な一撃で彼(スミス)は暴力を擁護し、女性を軽んじ、エンターテインメント業界を侮辱し、黒人社会に対する固定観念を恒久化させた」と批判。黒人は「暴力を振るう傾向が強く、感情をコントロールする能力が低い」という説がよりまかり通るようになると指摘した。(政治誌ヒル)
もっとも、この一回の失敗のためにスミスが罰せられるのは見たくないと同氏は述べ、今回の失敗はほかの人々も教訓にしてほしいとした。そしてスミスには、自分が他者に与えた害を認めて他者を守れる人間になってほしい、とコラムを締めくくったという。(同)
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