妻への愛からであっても…ウィル・スミスが米国で非難される理由

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 米アカデミー賞の授賞式で、俳優のウィル・スミスが、脱毛症に悩む妻をジョークのネタにしたコメディアンのクリス・ロックにいきなり平手打ちをし、放送禁止用語で罵倒するという事件が起きた。スミスはその後主演男優賞を受賞。スピーチの中で涙ながらに自分の行為について弁明・謝罪をしたが、アカデミーは処分を検討しているという。妻への愛情から出た行為として擁護する意見もあるが、暴力に訴える行為に対しメディアや業界関係者は厳しい目を向けている。

◆暴力は許されない 特別な夜が台無しに
 CNNのメディア・アナリスト、ビル・カーター氏は、スミスはトップスターであることを自覚し、時間をかけて対処することもできたと指摘する。しかし暴力的な方法を選んで、映画製作者や受賞者にとって1年で最も大切な夜を台無しにしてしまった。そのうえ受賞スピーチで「愛は人におかしなことをさせる」と言い放ち、醜い暴力行為を崇高な家族の価値観の一種として正当化しようとしたと批判している。

 スミスは主演男優賞受賞作『ドリームプラン(原題:King Richard)』で、テニス選手のウィリアムズ姉妹を育てた父リチャード・ウィリアムズ氏を演じた。今回の事件についてウィリアムズ氏は、詳細はわからないものの「正当防衛でない限り、他者を攻撃することは許されない」と述べている(NBC)。

 コメディ俳優として有名なジム・キャリーは、スミスが暴力をふるった後に主演男優賞を獲得し、スタンディングオベーションを受けたことに気分が悪くなったと述べた。有名人としてのプレッシャーが今回の行為に影響したかもしれないと理解も示したが、「利己的な出来事」と呼び、非難はしないが間違っていると述べた。(ヤフー・エンターテインメント

Text by 山川 真智子