危機に対する社会の反応を風刺、『ドント・ルック・アップ』のアレゴリーとは

Niko Tavernise / Netflix via AP

 昨年末に公開された、アダム・マッケイ(Adam McKay)監督の新たなNetflix映画『ドント・ルック・アップ(Don’t Look Up)』は、天文学者が政治家と民衆に対して、地球を破壊する彗星についての警告を発信する様子を描いたストーリーで、気候変動に関するアレゴリーであると解釈されている。その詳細とは。

◆聞き入れられない科学者の警告
 ドント・ルック・アップは、昨年12月10日に一部劇場にてリリースとなり、同月24日からネットフリックスでの配信が開始となった。マッケイが監督、脚本、制作を手がけ、レオナルド・ディカプリオとジェニファー・ローレンスが中心的なキャラクターを演じている。ほかにも、メリル・ストリープ、ケイト・ブランシェット、ジョナ・ヒル、タイラー・ペリー、ティモシー・シャラメなどの人気俳優が数多くキャスティングされている。

 物語は、ローレンス演じる、惑星の動きについて研究する博士課程に在籍する天文学者が、新たな彗星を確認し、ディカプリオ演じる彼女の担当教授である天文学者が、6ヶ月以内にその彗星が地球にぶつかり、地球を滅亡させるという計算結果をはじき出すところからスタートする。この重要な発見に関して警鐘を鳴らし、最悪の事態を回避するアクションを取るべく、2人の天文学者は早急に関係者と連携し、ストリープ演じる米国大統領との会議を取り付ける。しかし、大統領は事態の深刻さを理解せず、選挙を意識して、とくに対策を取らないという判断を下す。その事態を経て、2人はマスメディアを通じた発信を試みるが、真面目に扱ってもらえず苦戦する。

 映画では、ディカプリオとローレンスが演じる天文学者が、地球の危機に関するデータに基づいた専門的な見解を説明するも、政治家や、マスメディア、SNS、また政治家に対して影響力を持つ科学者や経営者などが繰り広げるドラマと「政治」に巻き込まれていく様子が描かれている。さらには、事実や専門的知見とは無関係の力に巻き込まれるなかで、フラストレーションを抱え、怒りを爆発させざるを得ない状況に追い込まれる様子が描かれている。結果、ますます聞き入れられないという負のスパイラルが生まれていく。

Text by MAKI NAKATA