TikTokで人気爆発、フォロワー世界2位のカビー・ラメとは?

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◆パンデミックを機に始めた創作活動
 現在21歳のラメは西アフリカのセネガル生まれだが、1歳以降、北イタリアの工業地域キヴァッソ(Chivasso)で生まれ育った。パンデミック以前、彼は工場で働いていたが2020年3月に失職した。その後、実家の一室でTikTokビデオの投稿を開始したという。特筆すべき点は、彼はハリウッッドなどからのサポートを背後に、人工的・作為的にフォロワー数を増やしたわけではなく、自然な形でフォロワー数を増やしていったという点だ(ニューヨーク・タイムズ)。作り込まれたものではない、彼のオーセンティックな表現によって、国境を越えて多くのファンを獲得したようだ。

 一方、彼がTikTokというプラットフォームを選んだということも、タイミング的によかったのではないかとクオーツは分析する。昨年8月、中国のIT企業バイトダンス(ByteDance、字节跳动)が展開するTikTokは米フェイスブック社が展開するフェイスブックやWhatsAppなどのアプリを抜いて、2020年世界で最もダウンロードされたアプリとなった。また、TikTokは昨年9月に、クリエイターが他人のビデオをタグ付けし、自分の作品に統合できるようにする機能を導入。ラメは、この機能を活用した多くのビデオを作成している。

 失業中であったラメだが、現在はTikTokのビデオ作成がフルタイムの仕事になりつつある。彼は「TikTokクリエイター・ファンド」を通じて、いくらかの収入を得ているようだ。クリエイター・ファンドは、2021年3月に導入されたTikTokによる資金援助スキーム。個別のクリエイターに対しての資金額の詳細は明らかにされておらず、ケース・バイ・ケースのようだが、いくつかの条件を満たしたクリエイターが申請できる。条件は、米国、英国、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア在住の18歳以上であること、1万人以上のフォロワーがいること、過去30日間に10万以上のビデオ閲覧数を獲得していることなどとなっている。また、ラメは、イタリアのパスタブランドであるバリラ(Barilla)などとも協業し、収入を得ているようだ。

 ラメは人生のほとんどをイタリアで過ごしており、事実上イタリア人として生活しているが、イタリア人としての市民権やパスポートは獲得できていない。残念ながらセネガルのパスポートは、ビザ取得などのハードルが高く、ほかのクリエイターの誘いがあっても米国訪問などが難しいという状況もある。彼がSNSの成功を継続できるかどうかという確証はないが、彼が世界的な人気を活用して、移動の自由を手にすることができれば、彼はほかのセネガル人や移民たちにとっての新たな希望の星となりうる。

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Text by MAKI NAKATA