「フェデラー・スニーカー」に視聴者から苦情 フェデラー出演番組を当局が審査

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◆テレビのトーク番組で審査が入る
 そして先月の7月下旬、この共同開発した新作発売に合わせ、スイス公共放送局SRFにて30分のトークショーが放映された。スポーツ選手たちの裏側に迫るシリーズ「スポーツパノラマ・プラス」で、フェデラーと、スイスのトライアスロン選手でロンドンオリンピックの金メダリスト、ニコラ・スピリグがキャスターに質問を受けながら競技や東京五輪や家族について話した。3人の背景には新作とその写真と、シューズの内・外側に刻まれているロゴ「R・」が置かれ、番組のほぼ最初から最後まで画面に映っていた。

番組(7月25日放映)はこちら

 トークでは新作については触れなかったものの、新作の宣伝になっていたことは否めないだろう。筆者はその日、テレビをつけていてチャンネルをまわした際に本放送をチラッと見ただけだったが、大々的な宣伝だという印象を受けた。

 放映から数日経ち、日刊紙ターゲス・アンツァイガーや高級紙NZZほかが、本番組に対してスイス連邦通信局から審査が入ったと伝えた。放送内容と宣伝とが一緒になっている点が規則違反かどうかが調査される。ターゲス・アンツァイガーによると、SRFのオンブズマンには苦情が数件入っていたという。
 
 同紙によると、テレビ番組内で製品を置き放映することは禁止されていない。ただし製品が映って宣伝効果がある場合、「この番組は●●がスポンサーです」「この番組には●●の製品が置いてあります」といった説明を流すことがスイス連邦通信局により義務付けられている。今回は、この説明がなかったことがよくなかったのだ。

 SRF側は、オンにシーンを提供するつもりはなく、シューズやロゴが画面に極力映らないよう意図していたとしている。オンも、宣伝しようという合意はなかったと述べている。フェデラーはお膝元でも人気が高く、氏の起業家としての道を称えようという思いがSRF側で無意識のうちに働いたのかもしれない。

 なお、オンは大手スポーツ用品販売業オクスナ―・スポーツと並び、新たにオリンピックのスイス人代表の公式パートナーになった。来夏の東京五輪で、スイス人選手たちはオンのシューズやアパレルを着用することになる。フェデラーにとっては、シューズ開発と並んで喜ばしい出来事だろう。

Text by 岩澤 里美