ジョニー・デップ、水俣病を世界に伝えた写真家に 映画『Minamata』

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◆カメラが写した実態 人々を動かす力に
 この映画を製作するのは、ジョニー・デップが設立した会社Infinitum Nihilだ。ハリウッド・レポーターによれば、すでに映画の製作側は被害者やその家族と面会しており、これらの関係者の協力を得て撮影されるという。

 監督のアンドリュー・レヴィタス氏は、沈黙のなか苦しんできた人々の声を届けるという責任を自身もデップも軽々しく捉えることはできないと話す。まさに取材をしていたスミス氏と同じで、この信じ難い物語を世界に届けるというミッションへの責任を負うことは、これ以上はない幸運であり、光栄に思うと述べている。

 映画の国際配給元となるHan Way Filmsの社長、ガブリエル・スチュワート氏は、カメラの前の人々に心を開いて繋がろうとしたスミス氏の物語は、実に人間的で感動的だと述べる。トルコの砂浜で死体で見つかったシリア人少年の写真や、天安門広場のタンクマンの写真同様、スミス氏の水俣の作品から、力強い写真は人々を行動に駆り立てるということがよく分かると述べている。

◆戦いは終わってはいない 映画が大衆に訴える力に期待
 水俣病と認定された人は3,000人ほどで、2万人以上が法的補償を求め被害者認定を求めてきたとロイターは伝えている。今年の日本の新聞報道によれば、現在でも認定された被害者のうち数百人が生存している。その内の1人で、胎児性患者である坂本しのぶさんは、水俣の被害を人々に伝える活動を45年間続けている。昨年は、水銀および水銀を使用した製品の製造と輸出入を規制する「水銀に関する水俣条約」の会合に参加し、水銀中毒の被害の重さを訴えた。

 水銀は自然界にも存在しており、毎年9,000トンが大気中に放出されているという。水銀中毒は、汚染された魚の摂取や、蒸発した液体水銀を吸いこむことで起こるといい、世界保健機構(WHO)は、水銀を公衆衛生上の懸念となる化学物質のトップテンの1つと捉えている(国連環境計画)。

 映画の製作は2019年1月に日本とセルビアで行われることになっている。『Minamata』の公開が、水俣病の実態と、水銀の有毒性が広く世界に伝わる機会になることを期待したい。

Text by 山川 真智子