「リンク内外で模範」クリスティ・ヤマグチ氏、アイスシアター・ニューヨークから表彰

FSteve Kohls / The Brainerd Daily Dispatch via AP

 10月15日、アイスシアター・ニューヨーク(ITNY)がクリスティ・ヤマグチ氏の表彰セレモニーを開催した。そこで称えられたのは、フィギュアスケーターとしての彼女の功績だけではない。

 1992年のアルベールビル・オリンピックで金メダルを獲得、その後もスターズ・オン・アイスのアイスショーで華々しい活躍を見せるなど、フィギュアスケート界でのヤマグチ氏の業績は非凡なものがある。また、スケートリンク外での活動も目覚ましい。なかでも、彼女が自らが設立した「オールウェイズ・ドリーム財団」での7年間にわたる子供の文盲の問題への取り組みは高い評価を受けている。

「世界の子供の4人に1人が、読むことを知らずに大人になるなんて。まったく信じがたいことです」とヤマグチさん。「でも、この現状は変えることができます」

                                                                                                                 

「私自身は自分の夢を追うことができました。家族からもコミュニティーからもサポートを得られて、とても幸運だったと思います。自分がある程度まで成功を手にした時、次はその幸運を他の誰かと分かち合いたいと強く思ったのです。オールウェイズ・ドリーム財団を通じて、私たちは、援助を必要とする人たちをサポートしたいと考えています。この財団は、恵まれない子供たちを支援することを理念としています。そういった子供たちの多くが、家に1冊も本を持っていません。私たちは、子供たちの中に眠っている本への愛を育てるため、まずは彼らが本を手に取れる環境を提供します。そのことが将来、彼らが学校を卒業した後も、ずっと彼らを支えるでしょう」

 自ら学んで身に着けた自己管理の能力、そしてスケートのチャンピオンとして培った芸術性は、読書を通じても得られるとヤマグチ氏は信じている。しかしそのためにはまず、子供たちに、その機会を与える必要がある。22年前に設立された同財団は、この7年間、読書プログラムを通じて1万人以上の生徒たちを支援してきた。

 1984年のサラエボ・オリンピック金メダリストであるスコット・ハミルトン氏は、長年来のヤマグチ氏の親友であり、彼女のメンター役も務めてきた。その彼は次のように語る。「お互いに競い合い、そこで勝利を得ることは本当に素晴らしいことです。多くのスケーターたちが、そのために日々、全力を傾けています。でも、それよりさらに重要なのは、彼らがそれを通じてどのような人間になるのか。また、競技引退後に、彼らが何をするのか。そこだと思います。そのスポーツの代表者、そのスポーツの親善大使。それこそが、歴史の中、社会の中での、アスリートたちの真の立ち位置だと私は思うのです。その点で言えば、ヤマグチ氏以上にそれを上手く体現した人物を、私は他に知りません」

 それがまさに、ITNYが今回ヤマグチ氏を2018年の受賞者に選んだ理由でもある。ITNYは、フィギュアスケート界の偉大なレジェンドたちの遺産を生きた形で伝えることも使命の1つに掲げているのだ。

「ITNYは、毎年、アイスショーの世界で成功を成し、単なるパフォーマンスの枠を超えてスケートに関わった人物を表彰します」ITNYの創設者で、芸術監督を務めるモイラ・ノース氏は語る。「さらに言えば、自身の業績をフィギュアスケート界に還元し、リンクの内外で、多くの人々のロールモデルとなりうる人物です」

「ヤマグチ氏は、まさにこれに当てはまります。彼女はアメリカ最高のスケーターであり、オリンピックの世界チャンピオン、さらには『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ』でも優勝しています。そして同時に、彼女は素晴らしい母であり、夫を支える妻であり、文筆家でもあり、そのうえチャリティー活動も行っています」

 ハミルトン氏は、当時8歳だったヤマグチ氏との最初の出会いを振り返る。サンディエゴで開催された全米選手権。カリフォルニア在住のヤマグチ氏が母とともにその会場を訪れた時、ハミルトン氏はすでにスケート界のスターとして名を馳せていた。

「彼女は花をいくつか手に持っており、彼女の母親は、それをスケーターたちにあげるように言いました。幼い彼女は、私にバラの花を手渡してくれましたよ」ハミルトン氏は当時を振り返って笑う。「そこで私は訊いたんです。『これを僕に?』と。その子はただ、顔を赤らめるだけでした。そのときの第一印象が、ずっと今でも残っています」

「数年後、彼女はフィギュアスケートの選手としてアルベールビル・オリンピックの出場準備をしていました。そこでまた、2人の軌跡が重なったのです。当時私自身はまだワールドツアーの最中にあり、アルベールビルの練習用リンクで練習していました。私が1人で滑っていると、彼女がリンクサイドにやってきました。そして手に持った花を氷の上に投げてくれたのです。なんだか、最初の出会いのシーンと重なりましたね」

 そしてまた二人は、ニューヨーク・チェルシーピアーズのスカイリンクで再会することとなった。二人はそこでITNYのショーに出演したあと、続いて行われた授賞式とパーティーに参加した。ITNYの公演は、10月12日と13日にも行われた。

 ヤマグチ氏は、ITNYの公演をもっと見るために、今後はニューヨークに行く機会を増やしたいと思う、と話した。

「他でもないITNYから選んで頂けたことは、本当に名誉なことだと思います」とヤマグチ氏はコメントした。「アイススケートから芸術的要素や演劇的要素を無くしてしまったら、それはもう死んだも同然です。スケーターたちが実際そこで、それらの要素を深め、さらに高めるための場所を提供する。そしてそれをスケートファンに公開する――ITNYの事業は、スケーターから見ても、コミュニティーにとっても、本当に素晴らしいものだと思います」

By BARRY WILNER, AP Sports Writer
Translated by Conyac

Text by AP

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