映画批評『オーシャンズ8』:ソダーバーグの『11』のリブートは難しい

Barry Wetcher / Warner Bros. via AP

 スティーブン・ソダーバーグによる『オーシャンズ11』のリメイクは期待に応えることが難しい映画だ。目白押しの記憶に残るキャラクター、想像以上に内容の濃い陽気な脚本、とても複雑に入り組んだ手口、そして生き生きとした製作手法によって生まれた同作の輝かしい魅力は、ソダーバーグ自身も過去2つの続編で達成できなかった。完璧に近い完成度の『11』でも、非常に重要な何かが欠けていた感が否めない。それは女性の存在だ。ブラックジャックのディーラーだったジュリア・ロバーツとストリップダンサーは例外だが。

 それなら17年の時が経った今、オスカーとエミー賞の受賞者・候補者や、グラミー賞の受賞者、騒がしい女性コメディアンを集結させ、オーシャンズ・シリーズの続編を更新しない手はない。人口のうち残りの半分に焦点を当てることでこの致命的な欠点をカバーするのは素晴らしい考えだ。『オーシャンズ8』が『11』に負けず劣らず新鮮で洗練されていれば申し分ない(カリスマ性や才能のあるスターが足りていないわけではもちろんない)。

 サンドラ・ブロックがデビー・オーシャン役で本作を率いる。存在が明らかになっていなかったが、ジョージ・クルーニーの演じたダニー・オーシャンの妹だ。ダニー・オーシャンは家業を多角的に成功させている。我々は彼女を仮釈放の審問で初めて目にし、彼女はもう「彼ら」とは仕事しないと言う。後で分かるのだが、今度は「彼女たち」と仕事をするのだ。

                                                                                                                 

 そして実際、デビーはバーグドルフグッドマン(訳注:ニューヨークの高級百貨店)で万引きをしまくることで、不利になりかねない彼女の条件を有利に働かせる。サンドラ・ブロックのような見た目をして、髪型もメイクもバッチリと決め、カクテルドレスを着ていると、刑務所を出た後に困らないのは当然だろう。彼女がちょうど棚から失敬した商品の返金を店員が求めたとき、裕福なお客のようなふりをするのを見るのは少しばかり愉快だ。彼女のやり方のうち90%は、外見通りに振る舞い、与えられた特権を活かすというものだ。

Barry Wetcher / Warner Bros. via AP

 しかし、映画のその他の部分からはこのような性別や階級に基づく描写は見当たらない。それゆえ、『オーシャンズ8』は少し色合いに欠けるところがある。映画のうち半分は、『セックス・アンド・ザ・シティ』のような滑稽なブランドやセレブへの崇拝に傾いている。

 デビーの計画は、1億5000万ドルのダイヤのネックレスを盗むというものだ。そうするためには、彼女と彼女の集めた頭脳集団はまず退屈なセレブ、ダフネ・クルーガー(アン・ハサウェイ)の生活範囲に潜入し、ダフネがメットガラでそのネックレスを着用するよう説得しなければならない。そこで彼女たちはそのネックレスを盗み、報酬を山分けするつもりだ(1人につきなんと1650万ドル)。

 グループのメンバーは次のとおりだ。グラムロッカーのように装い、薄めたウォッカで利益を出しているルー(ケイト・ブランシェット)、女盛りを過ぎたが返り咲くことを狙っている風変わりなファッションデザイナーのローズ・ウェル(ヘレナ・ボナム・カーター)、色気づいているジュエラーのアミタ(ミンディ・カリング)、ドレッドヘアをしたハッカーのナイン・ボール(リアーナ)、スリのコンスタンス(オークワフィナ)、知能犯罪で賄う生活をやめられない田舎臭い母親のタミー(サラ・ポールソン)。

 ブランシェットとブロックが予想通り役割を忠実に演じ、印象的なからかいの瞬間をいくつか持つことができている一方、ハサウェイは邪悪で粋な風刺によって甘やかされたスターとして、映画を本当に自分のものとしている。これはハサウェイがミランダ・プリーストリーと共演した時と同じで、「アン・ハサウェイ」という名前のキャラクターを演じる以外でこれほど適切な役柄はないだろう。

Barry Wetcher / Warner Bros. via AP

 セレブに対する風刺は一級品だが、ソダーバーグの『オーシャンズ11』を観たことがある人は、『オーシャンズ8』の大部分も観たことがあるといえるだろう。監督兼共同脚本家のゲイリー・ロス(「『ハンガー・ゲーム」』)は、慣れ親しんだ調子や試みを踏襲し、ソダーバーグの製作手法を真似ているが、成功していない。そして彼の視線を通すと、よく知られたメットガラという豪華な催しも恐ろしくつまらなくなってしまう。

『オーシャンズ8』での計画が現実的には見えないという点も上手く働いていない。またジェームズ・コーデン演じる探偵を最終的に敵にしたのも、むしろ気晴らしのためであった。

『オーシャンズ11』では、主人公たちが成功するのを見るのに危険なことやスリルがあった。『オーシャンズ8』では、ヒロインたちのだれもが失敗をするように思えず、うまくいくかどうか疑う余地が全くない。デビーが女性用トイレに入ってしまった2人の警備員を恥さらしにするだけで上手くいくというアイディアはあまりにも安直で、もっと工夫されたものを観客は求めている。

 それが『オーシャンズ8』の全体としての問題だろう。それは女性がしばしば過小評価されているという事実に基づいている。しかしその主張を通すなかで、主人公が誰であってももっと賢く面白い泥棒を求めるであろう観客を過小評価してしまった。

(編注)『オーシャンズ8』は、8月10日から全国公開。

By LINDSEY BAHR, AP Film Writer
Translated by Y.Ishida

Text by AP

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