「一生の夢」 コロンビアにとってのサッカー ロシアを黄色に包んだサポーターたち

Natacha Pisarenko / AP Photo

 19日に行われたサッカー・ワールドカップの日本対コロンビア戦は、2-1で日本が勝利し、テレビの生中継も高視聴率を記録した。多くの視聴者にとって、日本のサポーターの姿よりも印象に残ったのは、スタジアムを黄色のジャージで埋め尽くし、熱狂的に応援するコロンビアのサポーターのほうではなかっただろうか。ロシアから遠く離れた南米から大挙してやって来る彼らに注目が寄せられている。

◆サッカーが人生 コロンビアはW杯に夢中
 イギリスのiNewsのインタビューに答えたサポーターは、コロンビア人にとって日曜日にサッカーの試合を見ることは習慣であり、サッカーは宗教のようなものだと述べる。今回の南米予選ではコロンビアチームは苦戦したが、ファンは非常に楽観的で、首都ボゴタにはW杯ムードが満ち溢れていたという。

 人々が夢中になるのが、1パック2万コロンビアペソ(約750円)のパニーニ社のW杯ステッカーで、飛ぶように売れている。お昼休みになるとスーパーやその駐車場には、全ステッカーを集めてアルバムに収めることを目的とした人々が集まり、自発的な交換会の場と化している。通りにはコロンビア代表チームのジャージを来た人々が行き交い、バーやレストランの店先には国旗が誇らしげに掲げられている(iNews)。

 コロンビアという国は何事においても意見が分かれ、4800万人の国民が団結することはめったにないが、サッカー代表チームに関しては例外だとiNewsは述べる。多くのコロンビア人にとってW杯ほど大切なものはなく、開催地で代表チームを応援することは一生の夢だという。

◆会社も辞めた まさに一生に一度の巡礼
 コロンビアは今大会の開催地ロシアから1万キロ以上離れており、参加国のなかで最も遠い国の一つだが、推定1万4700人のコロンビア人が来訪すると見られている。これは観戦旅行で来るファンの団体としては、世界で3番目の規模だ。ガーディアン紙によれば、コロンビアで売れた公式チケットは6万5234枚で、イギリスの2倍以上となった。

 生涯一度というだけに、大きな犠牲を払ってでも訪れるコロンビア人サポーターも多い。iNewsのインタビューを受けた男性は、大会期間中休みが取れなかったため、医師の仕事をやめて来たと話している。エンジニアとして働く男性は、ローンを組みクレジットカードを作って旅費を捻出したという。

 観戦旅行の総額は、1200万~2000万コロンビアペソ(約45万円~75万円)はすると見られ、コロンビアの平均月収が110万ペソ(約4万1000円)であることを考えれば、かなりの金額だ。

◆サポーターの問題行為も コロンビア紙からも喝
 日本戦が行われたロシアのサランスクの広場には、ビールをがぶ飲みし、ロシアのロックバンドの歌に合わせ腰を振って踊るたくさんのコロンビア人サポーターが集まったということだ。コロンビアの旗を振って「Vamos, vamos Colombia(レッツゴー、コロンビア)」と繰り返す陽気な彼らは、地元ロシアの人たちをも楽しませており、10代の女の子たちにせがまれ写真に納まるサポーターも目撃されている(ロイター)。

 ファン同士の暴力行為がよく話題になるW杯だが、コロンビア人サポーターの善行が話題になっている。自国代表の試合をファンゾーンで観戦していた足の不自由なエジプト人男性を、メキシコ人サポーターと一緒に車いすごと持ち上げて、よく見えるようにしてあげたとのことだ。これがSNSなどで拡散され、W杯精神だと称賛されている(英ザ・サン紙)。

 その一方で、コロンビア人サポーターの目に余る行いもある。コロンビアの日刊紙El Tiempoは、日本戦後に一部のファンが日本人ファンを侮辱するビデオをSNSに投稿したり、スタジアムに酒を持ち込むなどルールを破る行為をしたりしていたと報じている。同紙はコロンビア外務省とともに、「なぜ不作法な行いを見せるため、W杯に行くのだ」と批判し、大金を使ってロシアまで来て、そのような行為に走る理由がわからないとしている。

Text by 山川 真智子