「ニンテンドーラボ」海外レビュー 好評の自由度の高さ 「多様で奥深い」「創造性育む」

BagoGames / flickr

 昨年「ニンテンドースイッチ」を大ヒットさせた任天堂が、スイッチの拡張キット「ニンテンドーラボ」をアメリカでもリリースした。プレイヤーがモノを作ることに重点を置いた同キットは、早くもマインクラフトのような新たなコミュニティの誕生を予感させている。しかし、同キットのSTEM知育玩具としての側面には、まだ課題があると見られているようだ。

◆「ニンテンドーラボ」とは
 ニンテンドーラボとは、任天堂の最新ゲーム機「ニンテンドースイッチ」と組み合わせて遊ぶ拡張キットである。現在「バラエティキット」と「ロボットキット」が販売されており、どちらも段ボールを素材としている。これらのキットは、ちょうどプラモデルのように段ボールからパーツを取り出して、そのパーツとニンテンドースイッチのコントローラーや本体を組み合わせると、釣竿やピアノができあがるのだ。

 同キットの遊び方は、ガイド通りにパーツを組み立てることに留まらない。さらに、パーツを使ってユーザが好きなように組み立てて自作のプロダクトを作ることができるのだ。また、「画面をタッチする」「Joy-Con(スイッチのコントローラーの名前)を振る」といったプレイヤーの動作と、パーツが振動するという動作をつなげることで簡単なコーディングも可能となっている。こうした特徴から、同キットは現在需要が高まっているSTEM(科学・技術・光学・数学の英単語の頭文字を集めた現代的理系教育の名称)知育玩具という側面があることもうかがえる。

◆バーチャルな世界を拡張するもの
 以上のような同キットのマインクラフトを思わせるプレイの自由度に関しては、多くの海外メディアが高く評価している。ゲームニュースサイト『ポリゴン』は「組み立てられるように事前に設計されているラボのおもちゃは真新しさに頼っているかもしれないが、全体としてのラボのプラットフォームは多様かつ奥深い」と評した。また、同キットを使って作った作品に関するコミュニティーが早くも立ち上がっていることが報告されている。同キットのひとつ「バラエティキット」の価格は69.99ドル(約7,800円)なのだが、幅広い遊び方ができることを考えると安く感じる、とも述べている。

 ワシントンポスト紙のレビュー記事では、同キットを端的に「任天堂にとって、ビルダーカルチャー(モノ作り愛好家の文化)に近づき、学校の教室やコーディング教室にいる子供たちの心を勝ち取るのに良い方法」と評している。そしてゲームニュースサイト『コタク』にいたっては、同キットを「バーチャルな(ゲームの)世界を拡張するもの」と表現する。さらに「ゲームというより血沸き踊るこのエンジニアリング・キットは、創造性と好奇心を育て報いている」と賛辞を寄せている。

◆玩具にしては難しい?
 一方で同キットのSTEM知育玩具としての側面に関しては、課題が指摘されている。ポリゴンは、複雑な仕組みで動作する「ロボットキット」に関しては、「ソフトウェアがユーザの望むように正確に動いていない時」には「少し厄介」であり、同キットが対象年齢としている子供に年齢以上の忍耐と自己コントロールが必要と評している。ワシントンポスト紙のレビュー記事を執筆したハイレイ・ツカヤマ氏は、サンフランシスコで開催された同キットをプレイするイベントに参加したのだが、イベントに参加した子供たちの何人かは、同キットの仕組みがよくわからずフラストレーションを感じていた、と報告している。

 コタクのレビューを執筆したケーザ・マクドナルド氏は、同氏の子供に同キットで遊んでもらったところ、パーツを組み立てるのに大人より時間がかかった、とのこと。しかし、同キットを組み立て終えて、自分の好きなようにカスタマイズする段階ではすっかり夢中になっており、RCカーを1時間で洗練させた、とも伝えている。

Text by 吉本 幸記