大盛況のカナダの草間彌生展 世界的「ドット」と現地をつないでほしいアート関係者

Yayoi Kusama. All the Eternal Love I Have for the Pumpkins, 2016, at the Hirshhorn Museum and Sculpture Garden. Wood, mirror, plastic, black glass, LED. Collection of the artist. Courtesy of Ota Fine Arts, Tokyo / Singapore and Victoria Miro, London. © Yayoi Kusama. Photo by Cathy Carver.

 カナダはトロント市のアート・ギャラリー・オブ・オンタリオ(AGO)で今月3日から開催されている草間彌生展が大盛況を見せている。現代で最も有名(そして高額)な女性アーティストとしてカナダでも広く知られる草間のショーは、5万枚ものチケットが発売後瞬く間に完売。AGO史上最大のショーになるだろうと言われている。

 ワシントンD.C.、シアトル、L.A.に続き、北米で4ヶ所目となるトロントのショー。チケットはカナダ国外からも購入されているが、クラシファイドなどで転売されているものもあるようだ。3月10日のチケットがアメリカのイベントサイトで250米ドル(約2万6000円)で販売されていたという(元値は30カナダドル(約2400円))。AGOはダフ屋や偽チケットなどにも注意を呼びかけている(トロント・スター)。

                                                                                                                 

◆「無限の鏡」閲覧時間は20秒
 ショーの目玉となっているのは「インフィニティ・ミラー」とよばれる6つの小部屋。草間のシグネチャーである水玉のかぼちゃや光などがいっぱいの部屋の全方向に鏡が張り巡らされ、双方が反射して空間が無限に広がっているかのように見える。一部屋3人に限られた訪問者は各部屋に20〜30秒しかとどまることができない。チケット入手の困難さや行列などの前評判に加え、「インスタ映え」しそうな幻想的な空間に、訪問者のほとんどはその20秒をセルフィー(自撮り)に費やす。AGO職員のハーマン・ローも、「ふだんセルフィーを撮らない私でさえも、携帯電話を取り出してしまった」と言う(CBC)。

 こうしてセルフィーがSNSに溢れかえるわけだが、カナディアン・アート誌のオンライン編集者のリア・サンダルズ氏はこのような現象にうんざりしているとCBCに語る。SNSでシェアされることにより、ショーの評判はどんどん広まりさらなる人を呼び込むが、これは「国際的名声獲得に執着しすぎる」という同ギャラリーに対するかねてからの批判につながる。サンダルズ氏は、草間の「ドット」を地元アーティストにつなげることをしないAGOにがっかりしているようだ。

「大物にスペースを提供するたびに、あまり知られていないアーティストがそのスペースを使えないということになる」とサンダルズ氏。AGOは、草間の影響力を借りて、彼女目当てに初めてギャラリーにやってくる大勢の人のために、例えば、草間と同じ80代のカナダ人女性彫刻家、Rita Letendre や Katie Oheの作品展を併設することもできただろう、と指摘。

◆中堅にこそサポートを
 トロントを拠点に活動する日本人アーティストの武谷大介氏も同意見のようだ。ときを同じくしてトロントではガーディナー美術館でオノ・ヨーコの展覧会「ザ・リバーベッド」(2月22日〜6月3日)も開催中だが、武谷氏は「草間彌生やオノ・ヨーコのような大物を紹介しあうことも両国にとって大切ですが、やはり地元のアーティストたちをつなげることなしには、真の意味の将来性はないのではないかと思います。なぜ私のような個人が、トロントの中堅作家展を東京のカナダ大使館で、ほぼ自費で企画運営するのか。オーソリティにもっと立ち入ってサポートしてもらいたい」と言う。武谷氏企画の展覧会『Multi Layered Surfaces』は、4月11日から6月6日まで、青山の在日本カナダ大使館高円宮記念ギャラリーにて開催。

 草間のドットがカナダと日本のアート界をつなげる線となるだろうか。AGOの草間彌生展は5月27日まで。

Text by モーゲンスタン陽子

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