栗山巧が問題視する日本プロ野球界の「サイン転売」「誹謗中傷」

近年、個人情報の保護や本人確認が強化されています。

個人情報でいえば、昔のプロ野球選手名鑑に選手自宅の住所が記載されていたほど大らかだった時代がありました。

現在は選手の個人情報が守られるようになり、自宅情報は載せないのはもちろんのこと、各球団としてもコンプライアンス強化に乗り出しています。

しかし、最近では選手のサインやグッズ、試合チケット転売やSNSを通じて選手への誹謗中傷が大きな問題となっています。

株式会社クリィの「クリィeKYC」

この問題に一石を投じたのは、インターネットを利用した各種情報提供サービスなどを手掛ける「株式会社クリィ」(代表取締役 CEO 根岸良多)です。

例えば、球団ファンクラブへの会員登録をはじめ、チケット購入などの際に個人情報を入力します。

そこでは名前だけではなく、住所や生年月日など数多くの情報を入力しなければならず手間がかかります。

今回、同会社が新しく開発したサービス「クリィeKYC」は、AI自動判定を通じて約1分間で身分確認や本人認証ができるようになり、こうした手間を改善することができるようになりました。

主に運転免許証やマイナンバーカードの撮影、または自撮りという少ないステップで完了します。

「クリィeKYC」のサービス発表会には、埼玉西武ライオンズの栗山巧選手がトークセッションに登場。

本人確認を通じた今のプロ野球界の問題について話をしました。

栗山巧が考えるサイン転売と誹謗中傷問題

栗山選手と「株式会社クリィ」は、栗山選手自身のホームページ作成を手掛けたことがきっかけ。

2021年9月4日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦で栗山選手は、通算2000安打を達成しました。

その際に「ファンに何か恩返しがしたいと考えていたのですが、ちょうど野球界では転売が大きな問題になっていました」と当時、プレゼント企画を考えていたことを振り返ります。

そこでこの企画に尽力したのが、根岸CEOをはじめとする「株式会社クリィ」でした。

「しっかりと(グッズが)ファンの手元に届くかどうかが心配でしたが、セキュリティがしっかりとしていたことで安心してサービスを使用できました」と安堵の表情を見せていました。

こうして転売されることなく、栗山選手を心から応援しているファンの手元に記念グッズが届いたそうです。

自身の転売対策について振り返った栗山選手。

次のテーマはサインやチケットの転売について。

近年、キャンプなどの際に選手のサインをもらっては高額で転売する動きが問題視されています。

その状況が続くことから、球団によってはファンサービスを規制するほど、一部のファンの悪質な行動によって選手とファンとの距離が遠くなりつつあります。

こうした問題にも栗山選手はとても敏感でした。

「本当にサインが欲しい方に対して気持ちをこめて書いていますが、難しい問題です」と話しながらも、新しい本人確認のサービスの誕生によってこの問題が解決されることを期待を込めていたのです。

チケットの転売についても「選手からすれば正当なルートで入手したチケットで試合を見てほしいと思うのでぜひ問題を解決してほしい」と心底、現在の問題解決を願っていました。

そして、近年とても増えてきたSNSにおいての選手への誹謗中傷について。

選手個人がアカウントを持つようになり、ファンとの交流の場として活用している場合が多くなっている反面、試合で結果を残せない日があると、ファンから直接、強い言葉で誹謗中傷されてしまうことがあります。

これには多くの選手が心を痛めており、中には選手の家族に対しても誹謗中傷する行き過ぎた行動をする人もいるほどです。

こうした問題に栗山選手は「批判ならまだしも、誹謗中傷に心を痛めているし、聞いていて気持ち良いものではないので解決してほしいと思います。多くのメッセージは明日への力になっていますが、良い方向に向くようSNSを使えればと…」と複雑な表情を浮かべていました。

オープン戦も終わり、もうすぐシーズンが開幕するプロ野球。

好きな選手が存分に力を発揮できるように熱い声援を送るだけではなく、観戦のためのルールを守ることや選手への言葉のかけ方など注意するべき点が数多くあります。

プロ野球選手も、私たちと同じ1人の人間です。

今回、発表会に参加した栗山選手も「数日後には開幕を迎えています。今スポーツ選手が抱えている問題をクリィさんが解決してくれる。おかげで選手はプレーに集中して頑張れます」と力強く最後を締めました。

選手のために私たちができることは数多くあります。ルールを守って来たる新しいシーズンを楽しんでいきましょう。

Text by 豊川遼