代替肉ブームは去ったのか? ビヨンド・ミート苦戦 その理由は

Nam Y. Huh / AP Photo

◆「メジャーになれない」米紙が理由を説明
 現状では、ビヨンド・ミート、インポッシブル・フーズなどのメーカーが製造する植物由来の代替肉バーガーやソーセージは、多くの投資家が期待したほど消費者には受け入れられていない。

 非営利団体グッド・フード・インスティテュートによれば、2022年にアメリカの消費者が購入した代替肉は2021年から8%減少。リピーターも63%に過ぎなかった。人気の陰りの理由として、WPは以下の点を挙げる。

・代替肉の味、食感、匂いは食欲をそそらない。
市場調査では、代替肉をおいしいと答えた人は20%ほどだったという。肉に似せるために使用する材料では、本物と同じ味が出せないのが理由だ。ファストフード・チェーンでも、試験的に代替肉を使用した製品を提供したが、メニューに定着させることはできなかった。

・値段が高すぎる。
同等の価格にするために多大な努力をしたにもかかわらず、代替肉の価格は平均して本物より67%高い。インフレも影響して、割高な商品を買おうとする人は減少。売り上げが伸び悩めば規模を拡大できず、価格を下げることも困難になる。コスト意識の高い消費者にとっては、不経済な高級品となっている。

・成分表が長すぎる。
代替肉のパッケージには、一般人が聞いたこともないような化学物質が列挙されており、もはや植物肉が健康的と考える人は減少している。

・人の食の好みを変えるのは難しい
たとえ代替肉へのシフトが環境に優しいとされていても、多くの人は嗜好(しこう)を変えないという研究結果がある。気候変動を強調したマーケティングをすることで業界は文化戦争に巻き込まれ、顧客からの反発を受ける場合もある。

・アメリカ文化に合わない。
代替肉はアメリカよりむしろ欧州で好調。植民地時代から肉食の国であるアメリカでは、過去に何度も肉を避けることが流行したが、結局代用品に求めたのは肉の味だった。ブームが来るたびに市場は停滞し、崩壊してきた。

◆安売りで市場拡大? それとも未来はないのか?
 高いとされる代替肉だが、ソーシャルメディアには日本の100円ショップのようなチェーン店、ダラーツリーの冷凍食品売り場で、ビヨンド・ミート製品が安売りされているという投稿が出ている。需要喚起を狙うための期間限定策か、長期的なものなのかはわからないと、ビジネス・インサイダー誌は述べている。

1.25ドルの棚に並ぶビヨンド・ミートのソーセージ。
通常は5~7ドルで売られているものだという

 WPは、今後植物由来の代替肉の品質は改善され、価格を下げる方法も見つかるだろうとしながらも、肉の模倣品を作るより、よりおいしい野菜を提供するなどの別のアプローチを推す。気候変動を懸念するなら、本物の食肉生産をより効率的、倫理的にして環境破壊を抑える方法に投資すべきだとし、植物性代替肉の未来には期待していないようだ。

Text by 山川 真智子