米老舗リアル書店を復活させた元バンカー 今年30店舗オープン

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◆書店経営のプロによる再生
 バーンズ・アンド・ノーブルの回復とも捉えられる新店舗計画の発表だが、必ずしもすべてのリアル書店が成功しているわけではない。実際、500店舗以上を展開し、一時期はバーンズ・アンド・ノーブルの競合として存在していた米書店チェーンのボーダーズ(Borders)は2011年に破綻した。バーンズ・ノーブルでは、エリオット・マネジメントとCEOのドーントが持つ書店経営のノウハウが、再生に大きな役割と果たしたようだ。

 ドーントは投資銀行で数年間働いた経験もありつつ、1990年にロンドンにあった既存の書店を買収して、当時は旅の本に特化したドーント・ブックス(Daunt Books)を立ち上げた。その後、同社はロンドン各地に店舗を展開し、現在は9店舗を構えるまでに成長した。そして2011年、ドーントは、経営難でロシアのビリオネア、アレクサンデル・マムに買収されたイギリスの書店チェーン、ウォーターストーンズ(Waterstones)の経営者に任命され、コスト削減や経営戦略の転換などを行い、2016年には経営を黒字に転換した。2018年、エリオット・マネジメントの子会社であるエリオット・アドバイザーズがウォーターストーンズを買収。その後、バーンズ・アンド・ノーブル買収に伴い、ドーントはバーンズ・アンド・ノーブルのCEOも兼任することになった。(フォーブズ

 ドーントは、イギリスにおける書店経営と再生の学びを生かし、各店舗の店長からの意見を吸い上げること、プライムロケーションに良い本を展示するために出版社主催のプロモーションを取りやめること、本と関係のない商品の販売をやめることなどを実行。またパンデミックの閉店を逆手に捉え、店舗の改装やレイアウト変更、在庫の見直しなどを行った。(アクシオス

 エリオット・マネジメントは昨年3月にまた別の英書店チェーン、ブラックウェルズ(Blackwell’s)を買収。ドーントは同社のCEOも兼任することとなった。投資会社と書店経営のプロが手がけるリアル書店再生。今後の動向も注目だ。

Text by MAKI NAKATA