ウォルマートと無人トラック配送実用化、ガティックCEOに訊く今後の展望

Gatik via AP

 昨年末、自動運転車のスタートアップであるガティック(Gatik)が画期的な発表を行った。その内容は、同社が小売業大手ウォルマート(Walmart)とのパートナーシップの一環として、2台の自動運転トラックを安全要員なしの完全自動運転にて運行するというものだった。カリフォルニア州マウンテンビューを本拠とするガティックは目下のところ、今後2、3年以内に完全自動運転トラック運行の実現プロセスを加速させることを目標に掲げている。

 消費者向けの直接商品輸送を行わない点において、同社の事業はそれ以外の自動配送企業とは一線を画している。ガティックの自動運転トラックが担当するのは、食料品やそのほかの商品において、大規模流通センターから小売店舗の敷地までの固定ルートの短距離輸送を何度も繰り返し実施することだ。実際これは、小売事業者の配送システムの重要な一部をなしている。たとえば、ウォルマートの本社があるアーカンソー州ベントンビル市内の7.1マイル(11.4 km)の固定ルート。この区間においてガティックは、ウォルマートの商品輸送を目的に完全自動運転車を2台運行中だ。

 計25台の自動運転トラックを運用するガティックは、ルイジアナ州とアーカンソー州のウォルマート、ならびにカナダ・オンタリオ州のロブローカンパニーズ(Loblaw Companies)と提携し、パイロットプログラムを実施している。そのガティックは昨年、新たな資金源を得てテキサス州にも事業を拡大。同社は従来型のロボット工学と機械学習ベースのアルゴリズムを組み合わせた独自のソフトウェアを開発し、自社のトラックに360度の視野を持つ全方位センサーを搭載している。

 ガティックの競合企業のひとつにトゥーシンプル(TuSimple)がある。トゥーシンプルは昨年、アリゾナ州の高速道路にてトレーラー車両の完全自動走行テストを実施した。それ以外のライバルとして名前が挙がるのは、自動運転トラック分野でボルボ(Volvo)と提携するオーロラ(Aurora)、そしてアルファベット傘下の企業であるウェイモ(Waymo)だ。ウェイモは現在、運送業大手のUPSと提携して自動運転事業に参入中だ。

 新型コロナのパンデミック下でオンラインショッピングへの消費者支出は急増し、自動運転トラックへの関心は高まる一方だ。小売事業者側には、短時間のうちに商品配達を行うことが従来以上に求められるようになった。その結果、数時間離れたロケーションに立地する単一の大型配送センターに依存するそれまでの方式から、各小売店舗の周囲に小規模な配送ハブを配置する方式に切り替える小売事業者が増加した。このような状況のなか、自動運転トラックによる輸送がパンデミック下でさらに深刻化したトラック不足問題を解消し、最大35%の物流コスト削減をもたらすだろう。このような展望を語るのは、ガティックの共同設立者であり、現在CEOを務めるゴータム・ナラン氏だ。

 AP通信は最近、自動運転技術の今後の展望とそれをとりまく法環境について、ナラン氏にインタビューを行った。以下にその要点を簡潔にまとめた。

Q. 現状はいかがですか?

A. 過去数ヶ月にわたり、当社は自動運転トラックを週7日、毎日複数回運行してきました。そしてそのなかから、多くの学びがありました。疑いもなく、その期間中に運行アルゴリズムはよりいっそう向上しました。当初は安全要員と追跡車両を必ず配置していました。当社は現在も安全要員と追跡車両をともなう運行スタイルにて運転を行っていますが、今後数ヶ月以内に助手席に誰も乗せず、追跡車両も一切なしで、完全自動運転のトラック運行が可能になると確信しています。

Q. トラック不足によって、自動運転トラックへの関心はどの程度高まったのですか?

A. 現地ローカルのトラックヤードにおいては、現在トラック輸送に必要とされるドライバーの数は6万人以上と推定されます。これは昨年の時点です。その必要人数が、控えめに見積もっても今後10年以内に16万人以上に跳ね上がると予想されています。しかしながらトラック運転の自動化を進めることにより、この急激な需要増に対処することができます。当社の見るところでは、あらゆる大企業が自動運転ソリューションの採用に非常に前向きになっています。ですからこの流れはもう止まりません。現在我々が向き合っているもっとも大きな課題は、この自動運転ソリューションを安全に、いかに大規模かつ迅速に実現するのか。そしてどの自動運転技術を最初に実用化すべきか、という部分です。

Q. では、どの程度の速さで事業拡大できるのでしょうか?

A. 2019年の夏に、当社はアーカンソー州にて自動運転車の商用化プロジェクトを開始しました。運転席からドライバーを排除し、トラックを繰り返し連続運用できる水準に達するまでに約2年を要しました。しかしその後、より多くのデータが集まり経験を積み重ねるにしたがって、また当社の技術向上もあいまって、学習に必要な時間は短くなってきています。つまり、安全を確保した上で完全無人運転を行うまでの必要期間も短くなってきているということです。

Q. 今後ガティックは短距離輸送に特化するのですか?

A. 今後数年間は短距離輸送に注力することになるでしょう。ただし実際には、それよりも「上流」の輸送にシフトし、より長距離のルートで運行する方が簡単です。当社としては現在、距離にして10マイル(16km)未満から300マイル(483km)までのルートのどこでも運行が可能です。複雑な都市内のルートや高速道路走行にも対応できます。なかでも、高速道路を使用したルートでの自動運転の実施は非常に現実的ですね。

Q. 安全上の懸念に対しては、どのように対応しますか?

A. たとえばA地点からB地点への移動を考える場合、当社は可能な限り安全なルートを選択します。車線変更が何度も必要なルートは避けます。学校、病院、消防署の付近を通らないよう配慮することもできます。ですから、とくに無理な要素は何もありません。そういった制約を踏まえた上でA地点からB地点まで、配達時間内に輸送すれば良いだけです。実際、「安全運行」は運行初日から当社がもっとも注力した部分でした。安全は当社が行うすべての事業の最重要かつ中心的なテーマです。当社は焦って何かを無理に行うことはありません。正しい方法で事業を行うことが何よりも大事です。

Q. 関連する法規制については、どのような現状ですか?

A. 現在アメリカ国内では、21の州で自動運転が許可されています。つまりアメリカ国内21州において、ドライバーを乗せない自動運転車を使った事業を当社は実施できるということです。ただし長距離トラック輸送に関していえば、州境を越える長距離輸送を実現するためには複数の州当局との調整が必ず必要になります。いまなお自動運転に関する法規はすべて州レベルのものであり、連邦政府レベルでの統一法規はまだありません。ただし明らかに、今後数年以内に複数の関連法が成立する公算が高いと当社は見ています。現時点においてこの分野のあらゆる法規が各州ごとにバラバラであることを考えると、連邦全体をカバーする統一法規の制定は、当社にとって大きな助けになるでしょう。

By ANNE D’INNOCENZIO AP Retail Writer
Translated by Conyac

Text by AP