物議を醸す「美白」化粧品 拡大する市場、自粛するメーカー
◆美白化粧品に関するリスクと物議
ガーナ、コートジボワール、ルワンダなど、アフリカ各国がいくつかの美白化粧品を禁止している。ケニアではハイドロキノンや水銀を含む一連の美白化粧品が、1998年および2000年以降、禁止された。一方で、裏では美白化粧品ビジネスは急成長しているとクオーツの8月付の記事は報じている。ナイロビのダウンタウンのリバー・ロードでは、スキンケアやヘアケア商品などを販売するショップが軒を連ねる。こうしたショップでは、隣国ウガンダやコンゴから輸入された美白化粧品を販売している。ケニアでは異なる所得層をターゲットにしたさまざまな美白化粧品が販売されている。緩い規制のなか、ハイドロキノン、ステロイド、水銀などのメラニン生成を抑える化学物質が配合された商品が販売されているため、肌へのダメージが懸念される。また、禁止された商品の使用は、肝臓や腎臓へのダメージ、精神病、胎児の脳へのダメージ、もしくはがんの発生につながるリスクがあるという点が、WHOから指摘されている。危険性のある商品に関しては、メーカーだけでなく、流通に対しての規制も必要である。米国では、活動家の指摘と署名活動が成功し、アマゾンは、危険なレベルの水銀が含まれている、いくつかの美白化粧品の販売を中止した。
美白化粧品は、その有害性だけでなく、その存在理由そのものも物議を醸している。より明るい肌への志向は、さまざまな歴史的・文化的背景に起因しており、必ずしも人種差別、植民地主義、白人至上主義といったイデオロギーによって醸成されたものだけではない。しかし、肌の色による差別、つまりカラリズム(Colorism)の問題も指摘されている。カラリズムは、白人が優位というヒエラルキーだけでなく、黒人の間でもその肌の色の濃さ・薄さによって存在する差別である。近年の差別反対運動「ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter:BLM)」などの流れは、美白化粧品業界にも影響を及ぼした。ジョンソン・エンド・ジョンソン、ロレアル、シャネルなどの各企業が、商品名やマーケティングに使用されている、「ホワイト」「フェア」「ライト」などといった、より白い肌をよいとするような表現を改める方向性を示した。
日本の花王も「美白」という表記を取りやめることを発表した。日本においては、美白の歴史は長く、必ずしも白人至上主義的概念に基づいたものではないという議論もある。一方で、美白商品や関連した美容業界のあり方は、「白い肌=美しさ」という概念が商業化されたものであり、美容関連商品を「美白」という形でプロモーションすることや、そうした商品を購入することは、白い肌がより美しく、好ましいという概念に加担していることにほかならない。日本においては、外国人(白人)的な見た目を理想とするような「外国人風」ヘアスタイルや、「外国人風の瞳を作るため」のカラー・コンタクトレンズといったようなマーケティング表現や商品展開が、一般的に流通しているという現状もある。
自然志向やありのままを受け入れるというビューティー・トレンドもなくはないが、これらが資本主義的な「トレンド」である限り、メディアや大企業が作り上げた美しさのイメージに消費者が抗うことは容易ではなさそうだ。
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