物議を醸す「美白」化粧品 拡大する市場、自粛するメーカー

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 肌のトーンを明るくしたり、メラニン色素のブリーチによって肌を白くしたりするという効能を訴求する「美白」化粧品は、アジアをはじめとする世界各地の女性たちの間で使われてきた。一方、商品に使われている原材料の危険性が指摘されたことや、人種や肌の色の多様性を受け入れようという価値観が普及したことなどを背景に、不使用やメーカー自粛の動きも広まっている。物議を醸す、美白化粧品業界の動きとは。

◆世界の美白化粧品市場の拡大
 インドおよび米国を拠点に活動する市場調査・コンサルティング会社、グランドビューリサーチが2019年にリリースした報告書によると2018年時点での美白化粧品のグローバル市場規模はおよそ83億ドル。市場の年平均成長率(CAGR)は7.4%で、2025年のグローバル市場規模は137億ドルにまで成長するとの予測だ。報告書によると、「とくに女性の消費者市場における、自信を与え、もっと美しく見せるための、より白い肌(fair skin)を好む傾向の強まりは、さらなる商品需要の高まりつながるだろう」とのことだ。いわゆる美白商品は、たとえば色素を抑えたり、くすみのない均一な肌にしたり、シミをなくしたりといったさまざまな効能を訴求するものだ。

 地域別にみると、アジア太平洋地域が最も大きな市場で、世界シェアの54.3%を占める。中国、日本、インドネシア、タイ、ベトナムなどが、美白化粧品市場の成長を牽引するとみられている。アジアや中東地域においては、より白い肌が好ましいとされる傾向が影響して、美白化粧品市場は男性消費者からの支持も拡大されつつあるとのことだ。北米市場においても2019年から2025年の間でのCAGRは7.5%と予測されている。さらには、アフリカ地域においても、より明るい肌が好まれるという傾向がある。2011年に世界保健機関(WHO)がまとめたデータによると、アフリカの女性の40%が肌をブリーチする美白化粧品を使用している。国別の数字では、たとえば、ナイジェリアは77%、トーゴは59%、南アフリカは35%との結果だ。

Text by MAKI NAKATA