週休3日制の実現は近い? 見直されるメリット パンデミックも影響

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◆心の健康第一 むしろ生産性も上がる
 ところが、コロナ禍で週休3日制が真剣に検討され始めた。CNBCによれば、スペイン政府は、労働者の給与を削減することなく、週32時間労働を3年間試験的に導入することに合意。プロジェクト費用として、5000万ユーロ(約67億円)を負担するとした。消費財メーカーのユニリーバは昨年12月から1年間、ニュージーランドで週休3日の試験運用を行うことを発表し、イギリスのスコットランドも試験制度に乗り出している(ガーディアン紙)。

 CNBCは、パンデミックの影響で、各国で過労感や燃え尽き症候群が深刻化していると述べる。在宅勤務をしていたイギリス人は、月平均で28時間も余分に残業していたという報告もあり、精神的な健康への配慮が必要と認識されつつある。

 時間を減らして生産性が下がっても、同じ給料を求められるのは困るため、これまで雇用者は週休3日に消極的だったという。しかしレディング大学の研究によれば、週休3日を導入している企業の3分の2から、生産性の向上が報告されている(ブルームバーグ)。また、日本のマイクロソフトが1ヶ月間、自社スタッフを対象に毎週金曜日オフィスを閉鎖したところ、従業員一人当たりの売り上げに換算し、40%も生産性が向上したという結果も出ている(CNBC)。

 シンクタンク「オートノミー」の調査では、労働時間の短縮は他者と仕事を分け合うことにつながり、パンデミック後の失業率の急上昇を防ぐことができるとされている。また大企業の多くは生産性の向上や値上げにより、労働時間の短縮に対応できるとされている。(ガーディアン紙)

◆脱炭素にも貢献 日本の週休3日の可能性は?
 週休3日制は、心の健康だけでなく、気候変動の対応にも重要な役割を果たすとされている。環境保護団体が実施した調査では、労働時間の短縮が職場のエネルギー使用量や、交通機関からの有毒ガスの排出量を削減すると指摘されている。さらに休日が増えれば、休息から運動、コミュニティ作りから家族との交流まで「低炭素」な活動が増えるため、全体的な消費を減らすことができるということだ。(ガーディアン紙)

 実は日本でも、自民党の議員が週休3日の導入促進を求めた提言を行っている。コロナ禍や環境を意識というよりも一億総活躍社会を目指した働き方改革の一環で、育児、介護、学び直しなどを想定したものだという。ただしこちらは給与が減るケースも想定されているということで、実現への課題とされている。

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Text by 山川 真智子