グーグルのフィットビット買収の意味 ハードウエア市場に踏み出す足がかりに

AP Photo/ Mark Lennihan

 グーグルは、ウエアラブルデバイスの先駆者、フィットビットを買収した。今回の買収は、同社にとって健康とフィットネスに関するテクノロジーへの参入の大胆な一歩となるかもしれない。インターネットの巨人であるグーグルは、一般消費者向けハードウエアの一大勢力になろうとして、これまでも絶えずたどたどしい努力を重ねてきた。今回の買収もその最新の手段の一つだ。

 グーグルは、サーチエンジン、Gmailなどのアプリ、スマートフォン向けアンドロイドソフトウエアなどで知られる純粋なソフトウエア会社としてその名を馳せてきたが、同社は過去数年間にわたり、一連のハードウエア製品のラインアップを独自に構築してきた。ニッチなスマートフォンのピクセルや、スピーカーやサーモスタットからWi-Fiルーターにいたるまで、さまざまなスマートガジェットがそのラインナップに含まれる。同社は最近、それらすべてを一括して「ネスト」製品とし、ブランドの再構築を行ってきた。

 グーグルは10月、ピクセルフォン、ネストスピーカー、およびワイヤレスイヤホンを含む一連の新製品を発表した。しかし、同社のガジェットの売り上げは、競合のアップルやサムスンに比べるとまだはるかに小さい。

                                                                                                                 

 だが、そのことはグーグルにとって必ずしも重要ではない。たいていの場合、消費者が同社のソフトウエアや人工知能サービスに夢中になるための手段としてハードウエアを位置づけているからだ。フィットビットが有名になるきっかけとなった健康とフィットネスに特化したウエアラブルデバイスは、グーグルの存在感を人々の生活のなかで確固たるものとするためのもう一つの手段だ。

 以前、グーグルは、ヘルステクノロジー分野のビジネスに進出しようとして撤退を余儀なくされたが、同社のソフトウエアであるWear OSは、フィットネスのトラッキング機能と他社が製作したスマートウォッチ用人工知能を提供している。しかし同社は、自身のブランド名を冠したフィットネス用ウエアラブルデバイスを有していない。

 しかし、この状況は変化しようとしている。

 最近、フィットビットはアップルとサムスンの競争の激化によって苦境に立たされている。しかし、イーマーケターでアナリストを務めるビクトリア・ペトロック氏によると、グーグルは依然としてウエアラブルヘルステクノロジーの分野では最も認知度が高く、信頼できるブランド名の一つだという。

「今回のフィットビット買収によって、すぐに市場で信頼を得ることができると思う」と同氏は言う。

 グーグルのハードウエア部門を統括するリック・オステルロー上級副社長は、フィットビット買収の発表記事をブログに掲載し、「今回の買収によって同社が自社製ウエアラブルデバイスをリリースする機会を得た」と述べている。

 フォレスター・リサーチのアナリストであるフランク・ジレット氏は、ハードウエアとソフトウエアの両方を設計しているアップルが一貫性を備えた製品をリリースしていることから、「グーグルも同様の製品を擁する必要があることを認識している」と語る。同氏によると、マイクロソフトもサーフェスをリリースすることにより同様の方向へ舵取りをしているという。

「アンドロイドOSを持つ製品はある程度の成功を収めたが、同時に、ユーザーエクスペリエンスが断片化していることも否めない」とジレット氏は指摘する。

 ハードウエア市場への参入が熱を帯びるなかでグーグルが仕掛けた最後の大規模な買収には、スマート・サーモスタットのメーカーであるネストが含まれている。

 ネストは長年にわたり大規模な独立ユニットとして機能していたが、昨年、グーグルの傘下に収まった。

「『グーグルによるフィットビット』のウエアラブルデバイスを我々が目にする日もそう遠くはないだろう」とペトロック氏は話す。

 しかし、グーグルやほかのハイテク企業が続々とハードウエアに注力している狙いは、それらの企業がハードウエアと一緒に販売するサービスの拡大伸張にある。

 ペトロック氏は、「これらの企業は、ユーザーが手を伸ばせば届くところに常にありたいと望んでいる。つまり彼らは、時間や場所を問わずシームレスにデバイスをつなぐ体験をユーザーに提供したいと考えている。ウエアラブルデバイスは、その戦略の一つだ」と語る。

 デジタルヘルスの市場は急速に成長している。80億ドルを超えるベンチャー投資を追跡した調査が1件、2018年に実施された。アメリカ連邦保健福祉省の主導のもとで患者が自分の電子健康データをより自在に制御できるようになれば、市場が一気に花開く可能性がある。

 フィットビットの買収は2020年に完了すると予想されており、その暁にはグーグルが大量の個人の健康情報と位置データを入手することになる。しかし同社は、保健衛生や健康に関するデータを利用した宣伝を販売するつもりはないとしている。

 しかし、それでもなおグーグルがすべての情報を保持し、個人データを一つの場所に保存することになるため、情報漏えいやハッキングの恐れがつきまとう。

 また、フィットビットを使用する職場の「健康」プログラムに登録している人々に何が起きるのかは依然不明だ。コンシューマー・レポートの健康プライバシーの専門家であるデナ・メンデルソン氏は、職場の健康プログラムに登録している従業員は、自身のデータを制御できなくなったことに気づかない可能性があるという危惧を抱いている。

 今回の買収の場合、「ユーザーが自覚しているか否かにかかわらず、長年にわたってフィットビットが収集したすべてのデータはすべてグーグルに譲渡されることになる」とメンデルソン氏は語る。

By RACHEL LERMAN AP Technology Writer
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP