アップル、中国共産党の求めに従順 香港デモ参加者を利するアプリ削除など

AP Photo / Kin Cheung

 アップルは、中国からの圧力を受け、香港のデモ参加者が警察の動きを追跡できるスマートフォンのアプリを削除した。同社は、反政府デモを大々的に取り扱うニュースアプリへのアクセスを中国本土内で遮断した。また、台湾の国旗を表す絵文字をさらに見つけにくくする変更を行った。

 アップルが最近、中国共産党に屈して実施してきた数々の降伏行為は、香港の消費者を無視したものであり、世界中の民主主義活動家の怒りをかっている。しかし実際は、アップル並みに中国にビジネスを束縛されているアメリカの企業はごく少数だ。

 ジャーマン・マーシャル財団のアライアンス・フォー・セキュアリング・デモクラシーで中国の調査に携わるマット・シュレーダー氏は、「もし中国で市場参入を企むのであれば、これは支払うべき対価だ。政党やその歴史、または指導者を手厳しい論調で批判した記事や、一国家として中国を好ましく描写していない記事など、すべての情報を検閲しようとする要求には従わなければならない」と語る。

 アップルは、自社の収益の大半を支えるiPhoneの組み立てを中国の工場に依存している。また、中国内で自社の製品の忠実な支持者も獲得しつづけてきた。同社にとって中国は、アメリカ、およびヨーロッパに次いで3番目に大きな市場として浮上しており、前年の営業年度において売上の20%を占めるようになっている。

 トランプ大統領が繰り広げている中国との貿易戦争は、同社にとってすでに複雑な状況になっている。アメリカが中国製品に課す高い関税と、通信機器大手メーカー、ファーウェイへの制裁に対する報復措置として、中国はアップルにとって打撃となりかねない措置を講じる懸念が高まっている。

 アップルの最高経営責任者、ティム・クック氏は、アメリカと中国の貿易戦争の停戦を試みるとともに、同社の利益を保護しようとして、過去1年の大半にわたり危ない橋を渡り続けてきた。

 同氏のこれまでの努力の大半は報われており、iPhoneはアメリカと中国いずれからの関税の打撃も受けずに今日を迎えている。しかし、トランプ政権がより多くの家電製品に輸入関税を課すことを約束した12月半ばには、この状況が変化するかもしれない。

 これらの関税に対する不安が引き金となり、アップルは中国政府の怒りをなだめ、立腹させないようにするためのさらなるインセンティブを用意している。

 アナリストは、最悪のシナリオのもとでは、中国の報復行為が同社の利益を10%から20%削減することになると推定している。これはつまり、同社の昨年の収益に基づくと、1年間で60億ドルから120億ドルの損失を被ることになる。

 10月10日、アップルは、警察の動向を追跡するアプリであるHKmap.liveをアップルストアから削除する決定を擁護した。香港の一部の人にとってこのアプリは、警官の警棒による攻撃や催涙ガスの連射、および警察による身分証明の確認から逃れるのに役立つツールだった。

 しかし、同社はこのアプリについて「警察を狙って待ち伏せ、さらに公共の安全を脅かすために使用されてきた。犯罪者はアプリを使用し、警察がいないとわかっている地域の住民を犠牲にした。このアプリは、当社のガイドラインと現地の法律に違反している」と述べている。

 10月10日の同社の決定は、「アップルは香港の悪党どもを手助けするつもりか?」と問いかけた共産党の新聞である人民日報を含め、さまざまなメディアからの圧力を受けてのことだ。

 香港の危機は、中国とビジネスを行う人々に対し、中国の味方につくよう圧力を加えている。香港の大規模なデモ行動は、中国本土の共産党支配下にある裁判所へ犯罪容疑者を送還することを許可するという、いまは撤回された政府の計画がきっかけとなって始まった。1997年に香港が中国に返還されたとき、中国はイギリス植民地時代に約束されていた西洋風の市民の自由と自治権を抑止しようとした。今回のデモ行動は、そうした中国の取り組みに対抗する、さらに広範囲な戦いへとエスカレートした。

 中国によるアップル批判は、10月頭に中国政府が、香港の反政府デモを支持するツイートを投稿したNBAに属するヒューストン・ロケッツのゼネラルマネジャーを非難したことに続くものである。中国の国営テレビは、NBAの試合の放送中止を発表した。

 警察の動向を追跡するアプリのユーザーの1人、香港の会社員であるアッコ・ウォン氏(26)は、このアプリが犯罪者に行動の自由を与えるという忠告を一蹴した。

 同氏は「ヘルメットや盾のような装備や服装で完全武装した警察の一団をどうやって待ち伏せするというのか?」と問いかけている。

 懐疑的な態度を共有しているのは、ミズーリ州共和党員のジョシュ・ホーリー上院議員のようなアメリカの政治家たちだ。同議員は10月10日、アップルを批判し、「実際にアップルを操っているのは誰なのだ? ティム・クック氏なのか、それとも中国政府なのか?」とツイートした。

 AP通信は、中国への屈伏であるとして非難されているアップルの最近の対応について同社に説明を求めたが、返信は得られていない。

 さらにアップルは、香港のデモを積極的に取り上げたニュースウェブサイト『クオーツ』への中国本土からのアクセスを遮断した。クオーツのCEO、ザック・スワード氏は、「この類の政府によるインターネット検閲」を非難した。同社のニュースアプリは、香港ではいまでも利用が可能である。

 また、アップルは最近、香港とマカオ向けiPhoneのオペレーティングシステム上の仮想キーボードから台湾の国旗を表す絵文字を削除した。中国向けのiPhoneでは、この絵文字は認識されない。だが、ユーザーがこの絵文字を検索すれば、依然として発見することは可能である。

 アップルは以前、中国の要求を受け入れて国内のオンラインストアから仮想プライベートネットワーク(VPN)構築アプリを削除した。同社の最近の動きは、その流れを受けている。VPNは、コンピューター間に暗号化された通信を確立し、中国政府が反体制的であるとみなしてブロックしているウェブサイトの閲覧を可能にする。中国は、こうしたVPNの制御を強化しようと企図している。

By JOHN LEICESTER, JOE McDONALD and MATT O’BRIEN Associated Press
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP