イケア、都心の小型店に舵 世界で30店オープンへ 原宿にも

AP Photo / Alik Keplicz

 空港で働くある女性が、ワルシャワに新しくできたイケア(IKEA)に昼休みに立ち寄り、家のリフォームプランを完成させる。彼女の周りでは、こまごまとした家庭用品を大きなイエローバッグに入れた人々が店内を物色している。カフェのテーブルは、ランチを食べに来た人々で埋め尽くされている。

 このイケアは、車でないと来られないくらい都心から遠く離れた場所にある巨大な迷路のような倉庫型の店ではなく、都心のショッピングモールに入っているタイプの店だ。世界最大の家具小売チェーンのイケアは、世界の主要都市にこのような小型店舗を30店オープンする計画だ。会社にとっては財政的な負担となるが、これは消費者の購買習慣の変化に対応するために必要な変革の一環である。

 この10年で、都市部に住み、車を持たず、家具などの商品をインターネットで注文する前に近場で直接見たいという消費者が増加した。

                                                                                                                 

「いつでも来られるのがいいですよね」と話すのは、先ほど新しいシステムキッチンを注文した空港職員のアンジェリカ・シンさん(29)。「ふつう、半日か下手をすると1日がかりじゃないとイケアには行けないでしょ。遠くにあるから」

 ワルシャワ市内のショッピングモールであるブルーシティーの1階と2階にまたがる新店舗の敷地面積は、約5000平方メートルと従来の大型店の4分の1ほどの広さだ。

 ここでは、クッションやカーテンなどの家庭用品を購入でき、コンピューターステーションで寝室やキッチンのレイアウトをデザインできる。大型店にある本棚やベッドのような大型家具は取り扱っていないが、店舗内端末キオスクで注文し、自宅へ配送してもらうことができる。

 このように、都心型店舗の登場によって、郊外の大型店舗へ足を運ぶのとはまったく違う買い物ができるようになった。

 このほかにも、3Dツールを使ったり専門スタッフに相談したりしてキッチンと寝室をプランニングできる新しい小型店舗「プランニングスタジオ」がマドリードやロンドンなどの大都市にオープンしている。また来年以降にパリと東京・原宿でも小型店舗がオープン予定だ。

「イケアは70年間ほとんど変わることなく続いてきました。大半の店舗が今も昔ながらのキャッシュアンドキャリー(配達を行わない現金決済の量販店)です」と語るブルーシティー店のプロジェクトマネージャー、アンドレアス・フリーガレ氏は、今こそイケアはこの10年間で大きく変化した消費者環境に適応しなければならないのだと説明した。

「アマゾンやウーバーのような企業が消費者の期待値を上げているのです。アマゾンの即日配送や2分で到着するウーバーの配車に匹敵するサービスが、イケアのような企業にも期待されています」と、先日店舗のカフェで行われた取材に対しフリーガレ氏は語った。「状況はかなり厳しいです。何もかもが目まぐるしく変化していますから」

 今年1月に死去したイングヴァル・カンプラード氏が創業したイケアの業績は、近年伸び悩んでいる。しかし、セールスを再び活性化させるためのビジネスモデルのアップデートは高くつく。11月28日、同社は2018年8月期の営業利益を前期比26%減の22億5000万ユーロ(約2890億円)と発表した。新店舗、配送サービス、オンライン販売への支出が増えたことが原因だ。

 市場調査会社ミンテルで主任リテールアナリストを務めるトーマス・スライド氏は、イケアの新たな取り組みは「都市生活の世界的傾向と都市の再生」への合理的な対応であると解説した。

「かつてのイケアは都市の外れに建てた巨大な倉庫に消費者がやって来ることを見込めましたが、今や柔軟な取り組みを行い、オンライン販売や消費者の生活や仕事に密接した小型店舗を通してイケアでの買い物を楽しめるようにする必要があることを認識しています」

 このような取り組みの先駆者はイケアではない。アメリカでは、小売大手のターゲットが顧客獲得のために小型店舗を展開。フランスのホームセンターであるルロワ・メルランは、イギリスのキングフィッシャーグループ傘下の DIYチェーンであるB&Qやソファ販売店DFSと同様の取り組みを行った。

「イケアはこのトレンドの最前線にいるわけではありませんが、これは未来のビジネスに備えるための重要な戦略です」とスライド氏。「この取り組みには、収益性を確保しつつ、新たな販売経路による付加サービスが加わるでしょう」

 郊外にあるイケアの大型店舗までバスで40分かけて行っていたと話すのは、ワルシャワで医学を学んでいる台湾出身のチェン・ユィ・ティンさん(25)。しかし、近所にできた新店舗に枕とベッドシーツを買いに来て以来、財布にやさしいランチを食べによく通っている。

「近くにあると便利ですよね。今は食事にだけ来るんです」

 彼の唯一の不満、それは、この店は冷凍ミートボールを置いていないことだ。

By VANESSA GERA, Associated Press
Translated by Naoko Nozawa

Text by AP

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