自動運転で提携、ウーバーがトヨタの支援を必要とした理由

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 衝突死亡事故とハイテク技術の盗用疑惑によって、単独での自動運転車開発が暗礁に乗り上げていたウーバー。この度トヨタと提携し、自社の配車サービス向けの自動運転車開発を目指す。

 一方日本を拠点とするトヨタは、8月27日に発表された提携の一環として、ウーバーに対して5億米ドルの投資を行う。

 今回の合意は、自動運転技術に関する両社の長所を融合させ、2021年までに、ウーバーの配車サービス向け車両を開発することを目標とする。

 その時点までにウーバーは最初の株式公開を完了し、トヨタを含めた初期投資家の数を今後さらに増やしたい意向だ。初期投資家各社は、ウーバーの革新的な配車サービスに対してすでに数十億米ドルの資金を投入してきた。しかしながら、起業から10年近くを経た現時点でもなお、ウーバーは投資に見合う十分な収益を上げるには至っていないのが現状だ。

 ウーバーとしては、自動運転車の導入によって、スマートフォンアプリの予約に応じて個人の車で乗客を送迎する人間のドライバーの人件費を減らし、財務上の危機を乗り切ることを想定している。

 同時にウーバーは、自動運転車事業を強化することで、同社の初期投資家の一つであるグーグル系列の自動運転車開発企業、ウェイモとの間に迫りくる競争をなんとか回避したいと望んでいる。いっぽうウェイモは、今年末までにアリゾナ州で独自の配車サービスを立ち上げる構えを見せている。

「私たちの目標は、世界で最も安全な自動運転車をウーバーのネットワークに配備することです。今回の合意は、その実現に向けた新たな重要な一歩です」ウーバーのCEO、ダラ・コスロシャヒ氏はそのように述べている。

 一方でトヨタは、これまでの純粋な自動車メーカーから、アメリカのGMやフォードなど多くの業界企業と同様、「モビリティーカンパニー」への進化を目指している。世界的なこのトレンドの中で、トヨタやGMをはじめ、数十年の歴史を持つ自動車メーカー各社は、自動運転車関連のハイテク企業への投資や提携を積極的に行うとともに、シリコンバレーに独自の研究拠点を次々に開設している。

 サンフランシスコに本社を置くウーバー。今回のトヨタとの提携により、両社がそれぞれの得意分野で相互に支え合うことに加えて、コンピューター、カメラ、レーダー、レーザーセンサーを使った自動運転車ナビゲーションの複雑なシステム設計・構築コストを両社で分担することも可能となる。

 今回ウーバーが自動運転の分野でトヨタの支援を仰ぐに至った背景には、その5ヵ月前に起こった一つの事故が大きく影響している。アリゾナ州テンピで、ウーバーの自動運転車が夜道を横断する歩行者に衝突し、死亡させたのだ。

 3月18日のその事故を受けて、ウーバーはあらためて安全性評価を実施、その間、自社の自動運転車開発プログラムの進行を一時中断した。

 アメリカの当局は、ウーバーの自動運転車のセンサーは被害者のエレイン・ハールズバーグ氏(49歳)を歩行者として認識したものの、人間のバックアップドライバーに配慮して、車両の緊急制動機能が事前に無効化されていたと断定した。テンピ警察によると、ドライバーは前方に集中しておらず、衝突の前にはスマートフォンでテレビ番組のストリーミングを見ていたという。

 その事故を起こしてしまった以上、ウーバーにとっては、もはや自動運転車の共同開発パートナーを見つける以外に選択肢はなかった―― 「ナビガントリサーチ」のアナリスト、サム・アブエルサミド氏はそのような見解を示し、次のように語った。

「ウーバーが独自開発するものは、それが何であっても、この先、消費者の信頼を勝ち取ることは難しいでしょう。消費者は、今後はむしろトヨタが正しい方法で開発をすすめ、細心の注意を払い、『すべてが適切にテストされ、評価された』ことを確実に示すことに期待していると思います」

 また一方で、ウーバーの自動運転車の拡大路線は昨年、もう一つの試練にさらされた。ライバル企業のウェイモが、「ウーバーはきわめて入念な計画に基づいてウェイモの技術を盗んだ」と訴えたのだ。この訴訟は、世間の注目の中で1週間にわたって法廷で争われ、最終的に、ウーバー側は不正行為の事実を認めない上で、ウェイモに対して2億4,500万米ドルを株式で支払うことで和解に至った。

By MICHAEL LIEDTKE and TOM KRISHER, AP Business Writers
Translated by Conyac

Text by AP