運転手付き高級車の世界とは? ショーファードリブンという贅沢

© Rolls-Royce

 ショーファードリブン(chauffeur-driven)とは、企業のオーナーや政府の要人といったVIPを乗せ、専門の運転手がドライブするという高級車。そもそも「ショーファー」とはお抱え運転手という意味で、かつては貴族などの使用人として屋敷に住み込み、馬車の運転から馬の世話、馬車のメンテナンスを一手に引き受けていたことに由来する。

 現在のショーファードリブンを定義するなら、オーナーの座るリアシートの快適性が最優先されたドライバーズカーとは対局のクルマを意味する。その究極はストレッチリムジンと呼ばれるホイールベースを伸ばしたセダンだ。ハリウッドの映画祭で俳優が乗ってくるダックスフンドみたいな長いクルマと表現すれば理解できるだろうか。

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 そのショーファードリブンの中でも究極といえば世界を代表する高級車ロールスロイスだ。そのなかでもゴースト・エクステンデッド・ホイールベースは、全長5,400mmの標準モデルよりさらに長い5,570mm。標準モデルより170mmも長い3,465mmを誇る。センターピラー以降をストレッチしているため、すべてリアシートの居住空間の拡大に与えられている。

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 まさにメーカー純正のストレッチリムジンではあるが、実はシルバーシャドウ時代からロングホイールベースは存在していた。後席スペースのプライバシーを確保する前席直後にパーティションを備えるためでもあった。

 ロールスロイスに次ぐ高級車であるベントレーは、実は元々はスポーツカーメーカー。経営不振でロールスロイスの傘下に入り、シャーシやエンジンを共有し兄弟車のようなポジショニングであった。

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© Bentley

 その後、VW傘下に移ってからスポーツカーメーカーとしてのキャラクターが色濃くなっている。それゆえフラッグシップのフライングスパーやミュルザンヌもメーカー自身がスポーツ性を謳っているが、ラインアップにはエクステンデッド・ホイールベースをしっかりと用意している。

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 ドイツ勢のショーファードリブンの代表と言えばメルセデス・マイバッハだ。現行モデルからメルセデスベンツSクラスの上級仕様という位置づけになって、そのプレミアム感に陰りを見せているが、2016年9月より受注を開始し、納期まで最短でも12ヶ月という「マイバッハS600プルマン」は別格といえるだろう。

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© Daimler

 このプルマンとは、1960年代に登場したメルセデスベンツW100型600というモデルのロングホイールベース・リムジンの由緒あるネーミングだ。メルセデスベンツが、マイバッハを最高級車として昇華させているのは間違いない。

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 スペックを確認すると全長は6,500mm。ホイールベースは4,418mm。全長はSクラスマイバッハより1,000mmも長いというのだから驚きだ。後席は対面4座式。つまり、運転席がある前席を含めると3列シートレイアウトを採用する。後ろ向きになっている中席は秘書などが座り、最後席に座る社長などと移動中も打ち合わせができるようになっている。

 BMWの7シリーズにはLiというロングホイールベースモデルが存在。

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© BMW GROUP

 後席にセパレート式シートやIndividualなどオーダーメイドで内外装などを仕上げるプログラムを施すなどショーファードリブン的なグレードもある。BMWというクルマのキャラクターから、ドライバーズカーとショーファードリブンの「いいとこ取り」のクルマだろう。

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 国産ショーファードリブンいえばトヨタ・センチュリー。東京モーターショー2017で3代目のコンセプトモデルが発表された。従来の国産唯一のV型12気筒エンジンからV型8気筒ハイブリッドへと変更され、時代に即した進化を遂げている。

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© TOYOTA

 近年はセダン=ショーファードリブンという定義が変化をし始めている。それは現行型トヨタ・アルファード/ヴェルファイアのエグゼクティブラウンジというグレードの存在だ。

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 Lサイズミニバンという、その広いユーティリティスペースはストレッチリムジンを凌ぐ空間を確保し、このエグゼクティブラウンジの2列目シートには豪華なキャプテンシートを2脚設定。オットマンなどまさに高級ソファーのような2列目シートは、3列目シート位置付近までスライドすることが可能で広大な足元スペースを確保している。

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© TOYOTA

 トヨタの豊田章夫社長が移動車としてもアルファードを使用していることからも、国産ショーファードリブンの一台といえる存在になっている。

 クルマのシートは多忙な人ほど、ひとりになれる少ない時間を提供してくれる空間だ。例え短い移動時間であっても、その時間をくつろぎや思索の時間として使いたい人にとってはショーファードリブンはまさにぴったりの1台なのであろう。

Text by 小野 真人

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