日本の「人材ミスマッチ」世界ワースト2位 複雑化する企業の求める人材

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 人材会社のヘイズが発表した「世界33カ国における労働の需給効率調査」によると、日本の「人材ミスマッチ」(企業が求めるスキルと人材が持つスキルのかい離)が世界33カ国中ワースト2位となったという。日本では、技術が進化するスピードに人材のスキルが追い付いていない状況で、AI技術者や自動運転技術者など、世界で開発競争が繰り広げられている最先端分野における人材不足が最も深刻な状況だという。

 また、本調査結果の中で、ヘイズは企業が求めるスキルの傾向として、「STEM」と「マルチスキル」を挙げている。STEMとは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Math)の4分野の頭文字を取った造語で、技術の発展に伴い、「STEM」スキルを持つ人材が益々求められている。また、今最も企業が求めているのは一つの分野での専門家ではなく、複数のスキルを複合的に併せ持つ、マルチスキル人材だということも指摘している。

 こうした人材需給状況の中、特に2017年に求人が増えた職業とスキルとして以下が挙げられている。いずれもマルチスキルかつSTEMスキルを持つ人材ばかりだ。

AI(人工知能)技術者:ロボット工学×IT技術×語学

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AI・ロボット工学の分野では、多国籍企業が欧米の本社と歩調を合わせて開発を進めるために、国内の優れた人材を採用しようとしており、エンジニアや研究者の需要が極めて高まると予想される。

自動運転の技術者:自動車エンジニア×情報通信×語学×プロジェクトマネジメント能力

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従来の製造業に情報通信の技術を取り入れる技術革新が急速に進んでいることから、自動車業界は、従来のエンジニアが持つ機械についての知識に加えて情報通信に関する知識を有する人材を求めている。加えて、グローバルな経営環境に対応するため、語学や異文化コミュニケーション能力、開発プロジェクトをマネジメントする能力を求めている。

データサイエンティスト:統計学知識×コンピュータサイエンス×分析力×マーケティング

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「データサイエンティスト」は、企業に集まるビッグデータを、統計学、コンピュータサイエンス、データ分析などの知識を駆使して、企業活動の役に立つような解析結果を導くという非常に高度なスキルを必要としている。

語学とファイナンスの知識を有する弁護士:法律×語学×ファイナンス

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クロスボーダーのM&Aが増加している事から弁護士にも法律に関する知識に加えて、語学とファイナンスの知識が求められるようになっている。

FP&A (ファイナンシャルプランニング アンド アナリスト):財務・会計×経営上の管理会計と分析

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FP&Aとは、通常の財務・会計に加えて、経営上の管理会計、分析など高度なファイナンス知識を持った人材のこと。外資系を中心に、財務・会計担当者に対し、より経営寄りの資質を求める動きが出ており、業界を問わず高いニーズがある。

メディカル・サイエンス・リエゾン:医学×語学×コミュニケーション能力×マネジメント能力

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近年、外資系製薬会社を中心に需要が急速に拡大している職種の一つ。医学的な見地から製品の適正な使用や、製品価値を社内外に伝達する職種で,高度な医学・科学における専門知識を必要とすることから企業は医師の資格を持つ人材を求めている。加えて、語学のスキル、コミュニケーション能力、マネジメント能力を有する事が必要となっており、需要が高まる一方で、人材不足が続いている。

 ヘイズのマネージング・ディレクター、マーク・ブラジ氏は、本調査結果を踏まえ、以下のようにコメントしている。「日本では、一つの専門分野を深く追求することがよしとされる傾向がありますが、世界的に、企業が人材に求めるスキルはますます複雑化、多様化しています。語学やビジネススキルなど、現在の専門分野に加えていくつかの専門分野を併せ持つ人材が今後ますます必要とされると予測しています」

Text by 酒田 宗一