どう立ち向かう? トキシックリーダーが企業や政府にもたらす悪影響

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著:Linda Ronnieケープタウン大学 Graduate School of Business, Senior Lecturer in Organisational Behaviour and People Management)

 トキシック(有毒)リーダーシップを特徴づけるのは、非常にありふれたいくつかの特性だ。意見されるのを嫌う。嘘をつく。言うことがコロコロ変わる。派閥根性が強い。独断専横が目立つ。ごまかす。脅してくる。いじめをする。ナルシストである。トキシックリーダーは時間の経過とともに組織の屋台骨を破壊し、組織全体を傾かせる。これは国家レベルの組織にも当てはまる。

 これには、いくつもの理由がある。もっともわかりやすいのは、トキシックリーダーのネガティブな行動によって、組織の気風が汚染されてしまう点だ。そのような行動の例を挙げると、
・組織の正規の手続きに従わない。
・能力よりも自分に忠実かどうかで部下を評価する。
・たとえば内部抗争のような、社会常識的に悪いものを正当視する。
・組織内の信頼関係を壊し、組織の健全な規律を腐食させる。

 いまここに挙げたものよりも目につきにくいが、トキシックリーダーが与える悪影響は他にもある。それは、彼らが周囲の人間関係にもたらすものだ。

 心理学者のポール・バビアク氏とロバート・ヘア氏は、トキシックリーダーの就任後、いかにして組織内で二つの派閥が形成されるかについて説明している。ひとつの派閥は、このリーダーの支持者、追従者、後援者から構成される。もう一方は、もともとの規律に忠実な人々から成る。彼らは自分たちが不当に酷使されていると感じ、自分たちが支持する組織の本来使命が危機に瀕しているという感覚を持つ。

 こう聞くと、すぐに思い浮かぶのは南アフリカのことだ。いま南アフリカの人々は、まさにこの種の派閥主義を自国で目の当たりにしている。ここではこの数か月、ジェイコブ・ズマ大統領の支持派と反対派との間で、壮絶な中傷合戦がくり広げられている。

 多くの人の目には、ズマ大統領は典型的なトキシックリーダーと映っているだろう。この大統領を支持するか否かはひとまず置くとして、彼が、何はともあれ物議を醸す人物であることは確かだ。批判に対して報復で答える彼の姿勢は、すでに広く知られている。

 しかし良いニュースもある。トキシックリーダーシップは打破できるのだ。人々がその存在を正しく認識してそれに立ち向かうとき、その力は剥奪され、改革が起きる。

◆トキシックな環境
 トキシックリーダーシップがあるところでは、労働環境の倫理規範がガタガタに傷ついている。そこで起こる典型的な行動としては、職権の乱用、盗み、暴力、言葉の暴力。どれもこれも、南アフリカ政治にまつわるニュースの中で耳にする言葉ばかりだ。

 政府調達価格をめぐるスキャンダル。納税者ファンドのずさんな管理。常態化している癒着や汚職。これらはもはや、南アフリカのおなじみすぎる現実だ。

 しかしトキシックリーダーの存在そのものが、部下の不正行為を許すわけではない。たとえば国の大臣や補助金団体の関係者が、横領する、あるいは汚職関係の締結を決断する場合。その選択責任はまったく彼ら自身にある。もちろん、誤った行動が主流になっている環境では、誤った選択をする方がはるかに容易であるわけだが。

 そういった問題行動は、おそらく金銭的な利益に基づくものであり、あるいはまた、組織の気風に根ざしたものだろう。甘い果実を追い求める強い衝動は多くの人々を刺激し、駆り立てる。そして自分の望みを満たすために他人の福祉を積極的に害する、あるいはもう少し控えめに、そういうものは無視する、という態度をとらせる。

 つまり、サイコパスのリーダーだけを排除すれば、それで即、組織全体の解毒が保証されるとは限らないのだ。その毒は、リーダーの追従者たちによって、組織リーダーシップの下位にまで深く染みついている可能性がある。

◆ボトムアップ型の戦い
 トキシックリーダーシップに対する反対行動を起こす責任は、誰か特定の個人が負うものではない。その責任は、組織全体にまたがるものだ。

 公共圏においては、この責任は社会全体が負うべきものだ。

 トキシックリーダーの負の影響に打ち勝つために最も重要なこと― それは、組織のほかのメンバーがそれぞれ本来の職責規範に忠実で居つづけることだ。そして連帯して立ち上がることである。

 トキシックリーダーシップに対し、人々がそろって立ち向かうことができれば、リーダーが自ら辞任する可能性も出てくる。ひとたびこれが起こると、組織内の個々人は、それまでリーダーが行った数々のネガティブな行動から距離をとり、組織を浄化する必要にせまられる。

 トキシックリーダーシップに立ち向かうもうひとつの方法は、彼らが誰の命令なら従うのかを見極め、その権威に訴えることだ。もちろん、悪徳リーダーが第三者を交えた対話や告発程度でひるむとは限らない。しかしそういう彼らも、正式な手続きと事実とで固めて攻められた場合、上位法規に対しては従わざるを得ない、かもしれない。そしてこの困ったリーダーが公務員である場合には、たとえば南アフリカにおける「パブリック・プロテクター」のような司法機関が、この権威の役割を果たし得る。

 だがもし仮に、こういったすべての試みが失敗するとしよう。それでもなお、トキシックリーダーの支配下で状況に対応していく方法はある。まず必要なのは、リーダーの過去を知り、ここに至るまでの経緯を分析すること。そしてこの情報を、決定権を持つ組織の主要メンバーと共有する。このことは極めて重要だ。なぜなら解決策の核心部分は、じつは、リーダーのもたらすネガティブな影響を危惧する、あなたと同じ意志を持った個々人との連携を打ち立てるという部分にあるからだ。

 連携にあたっては、罰則でしばるなどの敵対的な手法は好ましくない。むしろ逆に、主要な関係者の利害や目的に即した適切な基準・行動計画をつくり、彼らを底支えするような手法を取る方がうまくいく。

 民間企業の世界で観察される事象のほとんどは、公共部門のリーダーシップにも等しく当てはまる。適度な外部介入によって、高いレベルのアカウンタビリティ(職務モラル)が職場とサービス現場にもたらされる。

 このアカウンタビリティを向上させるには、タウンミーティングのような公開フォーラムが有効だ。リーダー達に、自身の素行について深く考える機会をもたせること。とくに政治の分野では、この種のビジブル・パフォーマンス・マネージメント(市民が直接政治家の仕事ぶりをチェックする仕組み)は、市民の福祉に好影響をもたらす。

 同時に不可欠なのは、リーダーに反対意見を表明する人々を保護するメカニズムを確立すること。不正を告発する者が、収入を失うなどの恐れを抱かず行動できる環境をつくることだ。

 この保護メカニズムが機能すれば、企業の社員も一般市民も、自分自身の安全と理想の両方を護りながら、恐れずに問題提起することができる。彼らの懸案が民間企業に関わることでも、あるいは政府機関に関する場合でも、それは同じことだ。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Conyac

The Conversation

Text by THE CONVERSATION

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