“あなたの手にピッタリの箸、作ります” 障害者にも優しい日本人職人のサービス、海外評価

 箸を正しく持てないと、料理をうまくつかめず、見た目も悪い。西暦7世紀頃に中国から伝来した箸は、長い歴史の中で、日本人の礼儀作法や美意識を育んできた。日本食は日本文化の非常に重要な部分を占め、箸の使い方は日本人のアイデンティティに関わる、とBBCは指摘している。

【誰もが箸を使えるように】
 箸を持ったことがない外国人にとって、箸の使い方を習得するのは難しい。一方、指を事故で失くした人や生まれた時から指がなかった人、麻痺を持っている人には、箸の形状そのものが問題となる。

 では、障害者は、箸を諦めてフォークやスプーンを使えばいいのか。日本人工芸家・宮保克行氏は、障害のせいで、箸を使うことを諦めるべきでないと信じている。宮保氏は、「箸で困っている全ての人のために箸を作る」というビジョンを掲げ、素晴らしい木工芸技術を駆使し、顧客のために箸をオーダー・メードしている。

【人間工学的デザイン】
 例えば、ばね式で、使用時に力や器用さを必要としない箸もある。実際はトングのように動く(『Fastcodesign』)。

 この箸は木でできており、オーダー・メードのグリップがついていて、持ちやすく、またその独特の形状に一役買っている、と海外メディア『psfk』は報道している。

【それぞれの必要に合わせて】
 宮保氏の箸は、顧客一人一人の特別な必要に合わせて作られる。親指を失くした人の箸は、麻痺を患う人の箸とは全く異なるデザインになるからだ。

 宮保氏は顧客と面会し、顧客の日常的な課題に応じて、ベースモデルを選択してもらう。顧客の手の大きさが図られ、完全にオーダー・メードの箸が作られる。

 顧客と直接会って話し、ニーズや課題を知ることは、宮保氏が作品を作り上げる動機づけとなっているという(『psfk』)。

【障害を持つ人との出会い】
 宮保氏が、箸を仕事にしようと思ったきっかけは、一人の障害者との出会いだったという(自身のサイト『miyabow.com』)。その人は、宮保氏が作った様々な箸を手に取ってみたが、どれ一つとしてその手に合うものはなく、「この人のための箸を作ってあげたい」という思いから、全てが始まったという。

 日本では、箸の使い方がその人のひととなりを表す、と言われている。宮保氏の顧客は、食事の際に恥をかくことを心配しないですむようになった、と『Fastcodesign』 は結んでいる。

↓職人技も、リアルなクールジャパンのひとつ↓

Text by NewSphere 編集部