英「物言う株主」、安倍首相にJTの完全民営化を直談判 民営化意欲のJTの対応は

 イギリスのアクティビスト・ヘッジファンドが、日本たばこ産業株式会社(JT)の完全民営化を求めている。20日付けで安倍晋三首相に直接書簡を送り、政府保有株(33%)を全て売却することを促した。ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)などが報じている。

【完全民営化は「経済戦略の達成に不可欠」】
 書簡を送ったのは、「物言う株主」として知られるザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)。物言う株主=アクティビストとは、自らの考えを提案し、上場企業の経営に積極的に関わろうとする株主のことだ。日本では、ライブドア株を巡るインサイダー取引事件で世間を騒がせた村上ファンドが良く知られている。

 TCIは、2011年からJT株を取得しており、これまでにも完全民営化や株主配当金の増額を求めてきた。フィナンシャル・タイムズ紙によれば、現在のJT株の保有比率は1.1%だという。

 ロイターは、TCIが「我々は日本政府に対し、直ちにJTを完全民営化することを強く求めた。なぜなら、JT株の保有は国にとって戦略的に重要ではないからだ」とコメントしたと報じる。安倍首相に宛てた書簡には「完全民営化は、あなたの経済成長目標を達成するために不可欠です」などと記されているという(WSJ)。

【JTはTCIの「5つの要求」を拒否】
 昨年、政府は50%のJT保有株のうち17%を売却し、その1兆円弱の利益を東日本大震災の復興資金に充てている。TCIは、売却をさらに推し進めることにより、資金を景気対策に充てることができるとも主張しているいう。

 TCIはまた、来月予定されている年次株主総会で、増配と自社株買い、金庫株の消却など5つの要求を行う予定だ。政府保有株の完全売却=民営化はその究極の目標だというわけだ。しかし、JTの取締役会は、既に5つの要求全てを「これまでの主張と実質的に同じものだ」として、拒否することを表明している。

 また、JTと政府はともに、今回の「完全民営化要求」に対するコメントを控えている。

【JTは完全民営化そのものには意欲的だが・・・】
 ただし、JTは民営化そのものを否定しているどころか、幹部はこれまでにも繰り返し「完全民営化への道を探っている」と述べてきたと、WSJは記す。完全民営化なくして世界のライバルと対等な立場で戦うことはできないというのがJT幹部の見解だという。

 TCIのパートナー、オスカー・フェルドハウゼン氏は書簡で、安倍首相に次のようなメッセージを送った。「首相には行動力がある。JTの完全民営化により、その評判に応えることを期待しています」(WSJ)。

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Text by NewSphere 編集部