欧米VSロシアのなか、中国は南太平洋でプレゼンス強化 ソロモン諸島と安保協定

ソロモン諸島のマナセ・ソガバレ首相と中国の李克強(2019年10月9日)|Thomas Peter / Pool Photo via AP

 ウクライナ情勢で米国など欧米諸国とロシアの対立が激しくなるなか、中国は依然としてロシア非難を避ける独自のポジションを維持している。そして、中国はこのほど南太平洋の島国ソロモン諸島と安全保障協定を結ぶことで合意した。SNSに流失した協定に関する文書によると、中国はソロモン諸島で進める経済プロジェクトの従事者たちを守るため軍部隊を派遣できる、ソロモン諸島は中国に警察や軍人の派遣を要請できるなど、中国の軍事的関与が可能な記述が見られるという。一部報道によると、中国の習近平国家主席は3月、全国人民代表大会の分科会の席で人民解放軍の海外における軍事活動強化を指示したという。今後はどうなるのだろうか。

◆中国との関係強化に動くソガバレ政権と市民の警戒感
 ソロモン諸島のソガバレ現政権は2019年4月に発足したが、9月にはそれまで国交を結んでいた台湾と断交し、中国と国交を樹立するなど中国への接近を進めている。安全保障協定の締結はその一環である。

 しかし、国民はそれに対して警戒感を強めている。たとえば昨年11月、親中路線を進めるソガバレ政権に対する反政府デモが首都ホニアラで発生し、ソガバレ首相の退陣を求めて数千人以上が国会議事堂を包囲し、一部が議事堂周辺の官公庁に放火するなどして暴徒化した。また、デモ隊はホニアラにある中華街でも暴徒化し、中国系事務所や銀行や警察署、学校などが放火され、商店の商品を略奪され、数百人の中国人が家を失ったという。

 また、今年に入っても2月、中華街の商店が略奪などの被害を受け中国人従業員が負傷する事件もあり、在ソロモン諸島の中国大使館は同国在住の中国人に対し、今後も中国権益を狙った事件が発生する可能性があるとして警戒を怠らないよう注意喚起した。

Text by 和田大樹