寝不足による健康リスク、運動することで改善可能 豪研究
睡眠不足は翌日のつらい眠気につながるが、長期間続くとがんや脳卒中など、さらに深刻な疾病を招くことがある。もしも十分な睡眠が取れない場合は、軽く汗を流すことで健康上のリスクを減らすことができるかもしれない。オーストラリアにおける研究で、このような傾向が示された。
◆寝不足による健康リスク、運動不足の人で顕著
研究は豪シドニー大学のボヒュー・ファン博士が主導し、結果がスポーツ医学誌のブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディシンに掲載された。研究チームはイギリスのバイオバンク・プロジェクトに登録されたデータから、中年の男女38万人分を分析した。睡眠の質については、睡眠時間・入眠時刻・不眠・いびき・日中の眠気の指標から、0から5のスコアをつけ、それを健康(4以上)、中程度(2〜3)、不健康(0〜1)の3段階に分類した。すると、不健康な睡眠パターンの人は健康な人に比べ、健康上のリスクが高いことが確認された。若くして死ぬリスクが23%、心臓病で死に至るリスクが39%、がんで死亡するリスクが13%高かったという。
ところが、寝不足によるこうした悪影響は、ある程度の運動をすることで解消できるようだ。研究チームは各データ提供者の日頃の身体活動のレベルを、世界保健機関(WHO)が定義する高・中・低のほか、中高強度身体活動(MVPA)なしを加えた4つのカテゴリに分類した。すると、十分な睡眠を確保できていない人のなかでも、こうしたリスクが顕著なのは、MVPAなしの人々であることが判明した。
◆中高強度の身体活動が理想
研究チームは論文において、「睡眠不足と、全死亡リスクおよび死因別死亡リスクとの関係性は、身体活動が低い場合に悪化しており、相乗効果が存在するとみられる」と結論づけている。
逆に言えば、積極的に運動をこなすことで、睡眠不足による健康リスクをコントロールすることも可能だ。論文を受け、医療ニュースを伝えるメディカル・ニュース・トゥデイ誌(7月5日)は、「高いレベルの身体活動は、質の悪い睡眠による健康へのネガティブな影響を顕著に中和する可能性がある」と報じている。「MVPAなし」のカテゴリ入りを避けるには、3METS以上の強度の運動を毎週行うとよい。METとは運動強度の単位のことで、安静時の1時間での活動量を1としている。目安として1時間あたり、通常速度での歩行をこなすと3METS、速歩で4METSとなり、中強度の運動とみなされる。また、高強度とみなされる6METS以上の運動としては、登山で7.5METS、ランニングで15METSほどとなる。
研究に参加したシドニー大学のエマニュエル・スタマカキス博士は、身体活動は睡眠時間よりも意識的に調整しやすいと指摘している。睡眠不足と運動不足の両方が増えている現代社会において、睡眠時間のコントロールが難しい場合には、運動量を改善してみるというアプローチが有益になりそうだ。
◆生活スタイルの変化で目立つ運動不足
WHOは身体活動について、気軽なウォーキングやサイクリングなどからさらに激しい本格的なスポーツまで、どのようなタイプの活動でも該当すると位置づけている。遊びやレクリエーションの一環として、本来は日常生活のなかで自然に行える行動だ。ところが、現在世界では成人の4人に1人、青年層では8割超が運動不足の状態にあるという。交通手段の発展により徒歩が減っていることや、仕事や遊びのスタイルが変化し、座りっぱなしが多くなったことが仇となった。
日常的に一定の身体活動をこなすことで、心臓病や脳卒中、そして糖尿病にがんなど、非伝染性の疾病を予防・コントロールする効果があることが証明されている。WHOによると、高血圧の予防や理想的な体重の維持など、生活の質を向上させ幸福感を高める効果があるという。睡眠不足の日々が続いてしまったならば、生活のなかに運動を積極的に取り入れ、健康上のリスク管理を心がけたい。
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