眠れないのは近視のせい? 近視と睡眠の意外な関係、豪研究で明らかに
近視はものが見えにくいだけでなく、生活サイクルが乱れて睡眠にも悪影響が出やすくなるようだ。オーストラリアで行われた研究によって、そのような傾向が明らかになった。睡眠ホルモンのメラトニンが関係しているのだという。
◆子供に多い近視の発症
近視とは近くのものがはっきりと見える一方、遠くのものがぼやけて見える症状だ。屈折性視覚障害に分類され、眼に入ってきた光が眼球のなかの正しい位置で焦点を結べないことで発生する。本来は網膜の上で像を結ぶべきところ、眼球の内側寄りにずれてしまっている状態だ。たとえば手元はよく見えるが、遠くの道路標識は見えにくいといった状態は、近視の代表的な症状だ。
近視は子供と若者に多く、早ければ幼年期から、一般的には思春期前後の発症例が多い。遺伝的要因や手元のものを長く見過ぎたことなどが原因で、発育段階で眼球が奥行き方向に過剰に成長し、焦点を結ぶ位置が網膜からずれてしまうのだ。
◆睡眠サイクルに悪影響も
このようなリスクを持つ近視だが、近年の研究では隠れた実害として、体内のメラトニン生成のリズムに影響し、睡眠を乱す可能性が指摘されている。オーストラリア南部・フリンダース大学で視機能を研究するランジェー・チャクラバルティ博士らの研究チームは、近視症状を持つ人々18名と正常な視覚を持つ14名を対象とし、この説を検証するための実験を行った。実験では唾液と尿を採取し、睡眠5時間前から起床時までのメラトニン濃度の変化を検証した。
すると、近視の人はそうでない人に比べ、メラトニン生成のピークが平均で1時間12分ほど遅れていることが判明した。睡眠ホルモンのメラトニンが眠気を催す効果を持つことを考えると、睡眠サイクルが後ろにずれがちだということになる。また、近視の人々は眠ろうとしてから寝付くまでの時間が長く、睡眠時間が短く、朝ではなく夕方に活動しやすい傾向も有意に観察された。睡眠学術誌スリープ(2020年10月8日)に掲載された論文のなかで研究チームは、「こうした発見は、人間における概日リズム(いわゆる体内時計)と近視の潜在的な結びつきを示すものだ」と結論づけている。
◆スマホ普及で症例増加
スマートフォンなど電子機器の普及もあり、世界的にも近視の症例は増加しつつあるようだ。遠くのものが霞むだけでなく、強度の近視になると網膜剥離や緑内障を招くことがあり、失明の恐れがある。決して軽視できない症状だ。
近視を予防するためには、画面を注視する時間を減らすことが有効なのだという。フリンダース大学のプレスリリースによると、研究を主導したチャクラバルティ博士は、「若い人々に広まっている近視の危険を減らすため、子供たちの睡眠習慣とスクリーンを見つめる時間を見直すべきです」とアドバイスしている。
電子機器の画面はブルーライトを放つため、メラトニンの生成が抑制されてしまい、体内時計を狂わせることがある。博士は「十分な睡眠と良好な視覚を確保するためには、デジタル機器の使用を幼少期、とくに夜間に控えることが大切です」と説明している。ブルーライトの影響で当日の夜に寝つきが悪くなるだけでなく、過度な画面の注視が長期的には近視を招き、さらに眠りにくい体質になってしまうことがあるようだ。
遠くが見えにくくなにかと不便を感じる近視だが、睡眠不足など隠れたリスクがあることが明らかになった。
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