元寇の神風は吹いた? 湖底に眠っていた証拠が示すものは?
鎌倉時代の元寇(蒙古襲来)の際、日本に神風が吹いて敵勢を退けたという通説は本当なのだろうか? 長年議論されてきたテーマだが、元寇をモチーフにしたゲーム『Ghost of Tsushima』の爆発的なヒットをきっかけに、いま改めて海外から熱い視線が注がれている。比較的近年の科学的研究では、謎を紐解く鍵が水底から発見されていた。
◆神風伝説
いまから約750年前にあたる鎌倉時代中期、フビライ・ハン率いるモンゴル帝国は高麗との連合軍を結成し、日本侵攻を試みた。現在の長崎・対馬などに二度にわたって襲来しており、それぞれ「文永の役」「弘安の役」と呼ばれている。
当時アジアからヨーロッパの一部にまで覇権を広げていた元(モンゴル帝国)の軍勢は凄まじいものであった。兵の数は14万を超えており、それまで世界で見られた艦隊のなかでも最も大規模なものだったとも言われる。
あまりにも大勢に無勢の日本側だったが、通説によると二度の侵攻時ともに、神風と呼ばれる強力な風が吹き日本を護ったとされる。この通説は以前から海外にも知られており、一例として米スミソニアン誌(2014年10月10日)は、「二つの強力な台風(その並外れた勢力と神によると思われる起源から「神風」と呼ばれる)」が「モンゴルの艦隊を弱体化した」と紹介している。しかし、神が起こした風という神話的なこの物語は伝承以上の根拠を欠いており、実際に神風が吹いたかどうかはこれまで判然としなかった。