日本支援のライトレール、スリランカが計画中止 背後に中国の影 現地メディアは影響懸念
◆一帯一路の影
現政権は計画中止のもう一つの理由として、環境負荷の高さを挙げている。また、既存のビルも多く破壊せざるを得ないという。しかし、これにも疑問がつきまとう。LRT計画はほぼ全線で既存の幹線道路の上を走る高架形式になっており、既存の建造物の破壊は最小限に抑えられる。さらに現地のアイランド誌(10月8日)は、事前の環境アセスによって環境に過度のダメージが生じないことが確認されていたと振り返る。同誌は環境負荷は建前に過ぎないと見ており、「もし内閣がほかの理由でプロジェクトを中止したいのであれば、なるほど確かにそうする権利はあるだろうが、環境問題に不当な根拠を求めることなくはっきりとそう言うべきだ」と苛立ちを見せる(アイランド誌、10月8日)。
では、政権が隠す真の意図とは何だろうか? 親中派として知られるラージャパクサ首相の一面を考慮すると、答えは自ずと見えてくる。中国が主導する一帯一路構想への乗り換えだ。印ヒンドゥー紙によると、LRT計画中止の発表からわずか2週間で首相は中国共産党中央政治局の楊潔篪(ヤン・チエチー)委員との会談に臨み、一帯一路計画でより緊密な協力関係を築くことで合意した。
中国との関係強化に走る政権を、国内でも黄信号と受け止める向きがあるようだ。デイリーFT紙は「中国からのほぼすべてのプロジェクト援助が商業的な条件に基づいていた一方、スリランカは日本との長期的な友好関係を謳歌し、多数の低金利開発融資を受けてきた」と回顧する。