日本支援のライトレール、スリランカが計画中止 背後に中国の影 現地メディアは影響懸念

マレーシアのLRT|Lens Hitam / Shutterstock.com

◆中止の代償は
 デイリーFT紙は、計画のキャンセルで将来的な日本からの援助が削減されかねず、「経済的および政治的にかつてない大失策となる可能性がある」と述べ、危機感を示している。中止によって日本側に対し1億ドル(約105億円)規模の違約金が発生する可能性があるほか、白紙撤回によって交通渋滞の改善は5年以上遅れ、プロジェクト費用も膨らむのではないかと同紙の懸念は尽きない。日本は多様なインフラ計画に「考えられる限り最良の条件」で出資してくれていると記事は述べ、「我々は日本人に敬意を持って対応する必要がある」との意見を表明している。

 これまで計画を主導してきたラナワカ元大都市・西部開発相は、無念の一言だっただろう。メナフン誌は元開発相が日本の菅首相に謝罪のレターを送ったと報じている。文中ではスリランカにとって日本は70年来の真の友人であったと述べ、今後も両国間の緊密な関係が続くようにとの願いで締めくくられている。

 スリランカ側は新たな計画を模索することになるが、前述のように3分の1の費用でLRTと同等の効果を実現できるかは不透明だ。デイリーFT紙は各種代替手段にいずれも難があると分析している。BRTは道路の片側3車線への拡張が前提となるうえ、それ単体では今後20年間の交通需要増に耐えることができない。幹線道路の拡充案もあるが、用地買収の難航ですでにルートが二転三転しており、実現の見込みは薄い。高速道路の拡張計画も同様だ。また、バスと鉄道は現在、ほぼ政府関係者だけで輸送能力が飽和している。赤字経営でエアコンもないことから、仮に座席に余剰があったとしても、車通勤者たちに乗り換えを促すだけの訴求力を欠く状態だ。

 コスト高を理由に突如LRT計画を白紙撤回したスリランカは、危機的な交通渋滞解消の機会を年単位で先送りしてしまったことになるのかもしれない。

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Text by 青葉やまと