日本支援のライトレール、スリランカが計画中止 背後に中国の影 現地メディアは影響懸念
スリランカのラージャパクサ首相は、現地の首都圏で進行していたライト・レール・トランジット(LRT)敷設計画について9月末、唐突に即時キャンセルを指示した。プロジェクトは前政権が日本からの円借款によって資金を確保し、首都圏の慢性的な交通渋滞解決の切り札として期待されていたものだ。ラージャパクサ首相はコスト高と環境負荷を中止の理由に挙げているが、方向転換の陰には親中派政権の隠れた意図が見え隠れする。
◆プロジェクトの経緯は
LRTが計画されていたのは、東端に位置する首都コロンボから政治の中枢である中部のスリジャナワルダナプラコッテを経由し、西端にある郊外の都市・マーラベへと抜ける区間だ。現在幹線道路が結んでいる上に高架形式で建設する想定で、完成すれば東西16キロの路線に16の駅が設けられる予定であった。
計画のきっかけとなったのは深刻な交通麻痺だ。首都がコロンボからスリジャヤワルダナプラコッテに移転したことを契機に、自動車による渋滞が深刻化した。現地のデイリー・フィナンシャル・タイムズ紙(10月6日、以下デイリーFT紙)によると、15キロの移動に2時間弱を要するほどの惨状になっている。
当然、移動コストによるロスも無視できない。中東など世界情勢を報じるメナフン誌は、交通麻痺による損失がGDPの12%を占めるまでに膨れ上がっていると報じている。こうした事態を打開すべく、日本の国際協力機構(JICA)による資金協力を得て2012年まで現地で調査が実施された。続いて現地と日本の技術者が共同参画した2016年までの追加調査を経て、LRTを中核としてバス高速輸送システム(BRT)で補完する方式が最善であるとの結論が示されている。一般的な国際融資が利率6-7%の5年償還という条件のなか、JICAは利率0.1%の14年猶予付き40年償還という破格の条件を提示していた。