オオスズメバチに追跡装置、巣を発見・駆除 米国で定着阻止ミッション

Elaine Thompson / AP Photo

◆早朝の駆除作戦 専門家も恐怖
 一度巣の特定に成功すると、当局はすぐに駆除作戦を決行した。AP通信は先の記事の続報(10月25日)において、作戦の結果、当局が殺人バチの巣の駆除に成功したと報じている。当日は分厚い全身防護服に身を包んだ作業員たちが現場の林に分け入り、特殊な器具を使って巣からハチを吸い出したようだ。記事に添えられた写真では、透明なタンク内に回収された大量のオオスズメバチを確認できる。

 具体的な駆除作戦の模様は、ガーディアン紙が詳しく伝えている。駆除チームは土曜日の朝5時半に招集され、防護服をまとうと、まずは巣の高さに届くよう足場を構築した。続いて巣の開口部付近にある幹の割れ目を分厚いフォームで埋め、その上から幹全体にラップを巻きつけている。ラップには1箇所のみ開口部を設け、そこから一気に吸い出して回収容器内に捕獲するという手法が採られた。木片で幹を打ちつけてハチたちが外へ出てくるよう促し、内部に残った個体には二酸化炭素を注入して対処している。吸い出しによって捕獲された85匹のほか、網にかかった13匹が生け捕りになっており、回収された個体は合計で98匹に上る。作業後はフォームとラップでもう一度幹を密封し、さらに巣外へ飛び立っていた個体を捕らえるためのトラップを付近に残すという徹底ぶりだ。一連の作業は円滑に進み、朝9時までには完了した。

Elaine Thompson / AP Photo

 「殺人バチ」と恐れられる凶暴な種への対処とあって、さすがの専門家も生きた心地がしなかったようだ。ガーディアン紙は別記事(10月31日)のなかで、作業に当たった農務局所属の昆虫学者のクリス・ルーニー氏にインタビューしている。早朝に行われた作戦中はかなり冷え込んだためハチの動きは鈍く、幸いにも怪我を負った作業員はいなかったようだ。それでも氏はラボでその凶暴さを目の当たりにしてきただけに、作戦決行時は「彼にはゾッとさせられた」「刺されることよりも、(スプレー状に放出する)毒液によって目の神経に一生消えない損傷を受けることを恐れていた」と振り返る。

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Text by 青葉やまと