オオスズメバチに追跡装置、巣を発見・駆除 米国で定着阻止ミッション

Elaine Thompson / AP Photo

 オオスズメバチは日本国内では北海道から九州にかけて広く分布し、私たちにとっては危険ながらも馴染みのある種だ。しかし昨年12月からアメリカでも確認されるようになり、 「殺人バチ」が到来したと現地を震撼させてきた。アメリカ定着の阻止を賭け、当局は無線トラッキング装置などを活用した大掛かりな捕獲作戦を展開した。

◆待望の巣の発見
 オオスズメバチは大型種のハチで、女王蜂では体長は5センチほどに至ることもある。強い毒性を持つ毒液を多量に注入し、刺されると激しい痛みを生じることで恐れられてきた。アメリカ北西部のワシントン州で存在が確認されると現地メディアは、アジアで年間数十人を死亡させている「殺人バチ」が到来したとして一斉に報じた。ちなみに、アメリカに先立ってカナダのブリティッシュコロンビア州でも発見されているほか、フランスとイギリスにも近縁種が勢力を拡げているなど、世界各地での目撃が相次いでいる。

 定着を防ぎたい米ワシントン州農務局は、巣の発見と駆除に全力を費やしてきた。その努力が実り、最初の個体の発見から約10ヶ月が経った今年10月、初めて巣の発見と駆除に成功した。駆除までの道のりは長く、オオスズメバチを追跡するところから作戦はスタートした。AP通信によると、トラップにかかったオオスズメバチに、昆虫学者たちがデンタルフロスを使って無線追跡装置を縛りつけたと報じている。装置本体は1センチほどの小型のもので、そこに金属製のアンテナが備わる。無線信号を追跡して帰巣先を追ったところ、およそ300メートル先にあった巣の発見に成功した。巣は木の幹の割れ目を利用したバスケットボール大のもので、地上2メートルほどの高さに営巣されていたという。発見当時、周囲には数十匹のオオスズメバチが羽音を立てて飛行しており、内部には100〜200匹の個体が生息しているものと見られる。

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Text by 青葉やまと