「超えてはならないレッドライン」となるガザへの地上侵攻

イスラエル軍による空爆後、煙が立ち上がるガザ地区(10月23日)|Ariel Schalit / AP Photo

 パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエル領内へ数千発のロケット弾を打ち込んで以降、ハマスとイスラエルの戦闘が激化し、これまでの双方の死者は5000人を超えている。イスラエル軍とハマスの軍事力の差は歴然としており、すでに犠牲者と建物の破壊など被害規模の多くをパレスチナ側が占めている。それによって、中東を中心に世界中で反イスラエルの抗議デモが拡大し、イスラエルとイスラム諸国との一種の文明の衝突のような状況になってきている。

◆強硬姿勢崩さないイスラエル 自制呼びかけるアメリカ
 このような状況でも、イスラエルは強硬姿勢を崩していない。イスラエルは自衛権を主張し、ハマス壊滅のためのガザ地区への地上侵攻の準備を進めている。パレスチナ市民にガザ地区南部へ移動するよう呼びかけ、多くのイスラエル国民を動員していることからも、その姿勢に変化はなさそうだ。

 一方、アメリカはイスラエル支持の姿勢を堅持しつつも、多くのアメリカ人がハマスの人質になっていること、人道支援が円滑に進んでいないことなどを理由に、イスラエルに対して地上侵攻を遅らせるよう要請した。しかし、地上侵攻となればイスラエルとイランの緊張が高まり、レバノンやシリア、イラク、イエメンなど中東各地に点在する親イランの武装勢力の活動が活発化し、さらにはネット上でテロを呼びかけるアルカイダやイスラム国などスンニ派の過激組織の動向もあり、アメリカとしてはそういったリスクが一気に爆発する恐れから、本音としては遅延ではなく自制してもらいたいのだろう。今後、イスラエルが地上侵攻の構えを本気で示したら、アメリカは止めるよう圧力を加える可能性もある。

Text by 本田英寿