続く軍事的緊張 台湾情勢は今後どうなるのか

Chiang Ying-ying / AP Photo

 米中の間では先端半導体をめぐる覇権競争が激しくなり、日中の間でも、福島第一原発の処理水放出により中国が日本産海産物の輸入を全面的に停止するなど緊張が高まっている。一方、台湾をめぐる情勢も依然として予断を許さない状況だ。今後、台湾情勢はどうなっていくのだろうか。

◆昨年8月のペロシ訪台によって高まった軍事的緊張
 昨年8月はじめ、当時米下院議長を務めていたナンシー・ペロシ氏が台湾を訪問したことで、中国は対抗措置として台湾を取り囲むように周辺海域で大規模な軍事演習を行った。大陸側からは複数のミサイルが発射され、その一部は日本の排他的経済水域(EEZ)にも落下した。

 大規模な軍事演習に伴い、民間航空機では韓国と台湾を結ぶ大韓航空やアシアナ航空の便が一時ストップするなど緊張が高まった。それから1年が過ぎるが、今までのところ昨年8月を超える政治的緊張は走っていない。

◆現在も続く軍事的緊張
 そして、今日でも中国軍機による中台中間線越え、台湾の防空識別圏への侵入、西太平洋での中国海軍空母による軍事訓練などは今でも続いている。9月13日から14日にかけても、中国軍機68機が台湾の防空識別圏に侵入するなど、中国は台湾への軍事的挑発行為をやめる気配を見せない。台湾政府は9月、2年に1回公表する防衛白書の最新版を公開したが、中国の軍事的脅威に関するページがほぼ倍増し、中国軍機による中台中間線越えや台湾の防空識別圏への侵入などが常態化していると強い懸念を示した。また、軍事的に中国とロシアが協力を強化していると警告した。

 一方、中国政府は9月、台湾と海峡を挟んで隣接する福建省で中台関係の強化を目指すモデル地区を開設する計画を発表。同地区では台湾との経済関係強化のため、漁業や農業、テクノロジーなどさまざまな分野で台湾と中国の企業の連携強化が図られる計画だ。中国の狙いは、台湾経済の中国依存度を高め、平和裏に統一を実現することだろう。

Text by 本田英寿