「不当勾留されるリスクあり」アメリカが中国への渡航を再検討するよう警告

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 アメリカと中国の外交関係は、2月にアメリカで起こった中国による「スパイ気球」騒動が起こったことで、さらにこじれる結果となった。中国は、スパイ気球をアメリカ北部州にある軍事施設上空に飛ばして諜報活動を行い、機密情報を収集していたとされる。ブリンケン国務長官はこの件により、同月に予定されていた中国訪問を延期。今年6月になりようやく訪中が実現し、この問題は解決したように思われたが、その後7月3日になるとアメリカ国務省が突然「中国への渡航を再検討するよう推奨する」という勧告を出したのである。

◆広範囲で恣意的な中国の新しいスパイ防止法
 NBCニュースによると、この渡航再検討勧告は今年5月、78歳のアメリカ人が中国でスパイ容疑で逮捕されたこと、そしてその後、先月スパイ防止法と外交関係法が施行されたことに端を発しているという。このスパイ防止法は広範囲におよび、同国政府にとって都合の良い解釈を可能にする恣意的なもので、法律の下で公正かつ透明性のあるプロセスを与えられずにアメリカ人の出国を禁止したり、オフィスを捜索したり、海外の批判者に制裁を課したりすることを可能にするものだという。

 国務省の勧告には、「中国に旅行したり、中国に居住するアメリカ国民は、アメリカ領事館のサービスや、犯罪容疑の情報なしで勾留される可能性がある」と記されている。つまり中国に居住する人でも、観光やビジネスで訪れる人でも、下手をすると何の容疑か知らないままで勾留され、前出の男性のようにスパイ容疑をかけられる可能性があるのだ。これは何もアメリカに限ったことではなく、もちろん日本もその対象に入っているだろう。

Text by 川島 実佳