アジア安全保障会議からも漏れるグローバスサウスの本音

アメリカ、ASEANの国防相(6月2日)|MINDEF via AP

 毎年恒例であるが、シンガポールで6月2日から3日間の日程でアジア安全保障会議、通称シャングリラ・ダイアローグが開催された。同会議は防衛や安全保障に携わる研究者や防衛当局者にとっては一大イベントで、毎年各国の防衛担当の閣僚や軍トップ幹部などが出席し、自らの主張を展開する「アジアの安全保障に関する国連総会」のようなものだ。今年のシャングリラ・ダイアローグからは、どのようなことが感じ取れたのだろうか。

◆強まる中国の対米姿勢
 まず、中国をめぐる動きだ。中国の李尚福国務委員兼国防相は会議最終日の4日、台湾情勢について、「台湾は中国にとって核心的利益中の利益であり、平和的解決に最大限努力するが、独立をめぐる動きが激しくなれば中国の主権と領土を守るため武力行使を排除しない」「アメリカは言動に一貫性を持たせ、誠意ある行動をするべきだ」などとアメリカなどをけん制した。中国は毎年このような主張を貫いているので、これにあまり驚きはない。

 しかし、今年の会議ではアメリカが同国のオースティン国防長官と李国防相との会談を行うよう求めていたが、中国側はそれを拒否した。会議直前の5月26日には、南シナ海上空で中国の戦闘機が米軍の偵察機に急接近。また4日には、台湾海峡で中国軍の艦艇が米海軍のミサイル駆逐艦に140メートルのところまで異常接近するなど相次いで挑発的な行動を取っており、最近、中国のアメリカへの姿勢がより強硬になっている感がある。

Text by 本田英寿