『ホテル・ルワンダ』英雄の釈放に見る、カガメ大統領の巧みな政治手腕

ルセサバギナ氏(2013年11月15日)|US Embassy Sweden / flickr

 映画『ホテル・ルワンダ』のモデルとなったことで知られるルワンダのホテルの元副支配人、ポール・ルセサバギナ(Paul Rusesabagina)は、テロ罪で投獄されていたが先日釈放された。恩赦の判断にみる、カガメ大統領の政治手腕とは。

◆ルセサバギナの釈放
 ルセサバギナが逮捕されたのは2020年8月。彼はアメリカのグリーンカードを保持し、テキサス州で家族とともに暮らしていたが、アメリカからドバイ経由で講演先のブルンジに向かう旅の途中で、さらわれるような形でルワンダに移送され、ルワンダにてテロ容疑で逮捕された。彼は、ルワンダでの虐殺後、ベルギーで難民申請し、ベルギー国籍を保持。1996年、彼に対する暗殺の企てがあって以来、ルセサバギナはルワンダを離れていた。

 ルセサバギナは、事実上、独裁政権体制を続けるカガメ大統領を公に批判してきた。当局は、カガメ政権に反対するルワンダ民主変革運動(MRCD:Rwanda Movement for Democratic Change)とその軍部である反政府武装勢力FNL(Forces nationales de libération:National Liberation Forces)への関与、FNLが起こしたとされるルワンダ南部でのテロへの関与にかかわる13の容疑で、ルセサバギナを逮捕。その後、25年の禁固刑が言い渡され、彼は服役していた。今回の釈放の交渉には、アメリカ政府とともにカタール政府が関与した。

Text by MAKI NAKATA