政治、経済、モラル チュニジアを襲う3つの危機
◆命からがら帰国する人々
不満を抱えたチュニジア人にスケープゴートとして差し出された形の移民らの多くが、間もなく仕事も住む場所も失った。彼らは自国の大使館に押し寄せ、本国への送還を希望した。大使館がある国から来た人はよいが、自国の大使館がチュニジアにない国の出身者は、国際移住機関(IOM)の本部の前に寝泊まりした。(ジュンヌ・アフリック、3/5)
この惨状に、マリやコートジボワールなどの国は3月3日からチャーター便を飛ばして帰国希望者の送還を開始した。たとえば、チュニスのコートジボワール大使館の調べによると、チュニジアに約7000人いるコートジボワール出身者のうち1600人が送還を希望したという。(ル・モンド紙)
不法滞在者のみならず、合法的にチュニジアに滞在している人も迫害の対象となっており、なかには、家財道具をなげうってチュニジアを後にする人もいる。同じく合法的に滞在している留学生も、暴力を振るわれるため授業に出られなくなり、多くが帰国の途に就いたという。(ジュンヌ・アフリック)
◆世界銀行に食らったブーメラン
このチュニジアの手の平を返すような態度に反発して、アフリカの複数の国ではチュニジア製品のボイコットが始まった。また見本市やフォーラム、出張のキャンセルも相次ぎ、チュニジア企業の将来を案じる声も出ている。(ジュンヌ・アフリック、3/6)
そのためか3月5日になってチュニジア大統領府はプレスリリースの中で、移民をサポートする措置をとると発表した(ジュンヌ・アフリック、3/6)。だが、時すでに遅く、世界銀行は6日、チュニジアにおけるサハラ以南の移民への虐待増加を受け、チュニジアとのパートナーシップの枠組みを一時停止することを決定した。これはつまり、「チュニジアへのすべての新規融資が事実上凍結されることを意味する」(ル・モンド紙、3/8)ものだ。
GDP(国内総生産)の80%にあたる負債を抱えているチュニジアは、融資がなければまったく立ち行かない状態にある。あるエコノミストによると、「2023 年の予算は海外からの 50 億ディナール(約2200億円)相当を含む 250 億ディナール(約1.1兆円)の融資に基づいている」(ル・モンド紙、3/8)。