高まる「反習近平」への習氏の戦略は 国民の目をそらす常套手段なら日本へも影響

北京での抗議デモ(27日)|Ng Han Guan / AP Photo

 10月の中国共産党大会で習近平国家主席の3期目が正式に決定し、習氏は台湾統一には武力行使も辞さない構えを改めて強調し、社会主義現代化強国の実現、中華民族の偉大な復興などを進める方針を明らかにした。側近たちもイエスマンたちで固め、3期目は習氏が「毛沢東」になる上で最も重要な時となるだろう。しかし、ここにきて習氏が最も警戒する課題が表面化し、3期目は偉大どころか難題に直面しそうな様相だ。

◆ゼロコロナによって強まる市民による「反習近平」
 中国で新型コロナウイルスの感染者数がここ数日連続で過去最多を更新しているなか、厳しい行動制限などを伴う「ゼロコロナ政策」への抗議活動が各地で相次いで報告されている。

 新疆ウイグル自治区ウルムチ市では24日に10人が犠牲となる火災が発生したが、当時火災があったアパートでは外出禁止など厳重な封鎖措置が行われており、それによってレスキュー隊の到着が遅れたという。それをきっかけにウルムチ市ではゼロコロナに抗議するデモが勃発した。また、それに影響を受けたのか、上海中心部部にあるウルムチ中路に多くの市民が集まって抗議活動を行い、「ゼロコロナによって自由や権利を制限するな」「習近平政権は退陣せよ」などの声を上げた。

 また、北京中心部でもゼロコロナ政策に反対する市民が、「習近平政権は退陣せよ」などと抗議の声を上げ、一部の住民が封鎖された居住区から外に出て抗議デモを行ったりする姿が見られた。習氏の母校である清華大学でも抗議活動が行われ、数百人の学生が参加した。北京では10月の共産党大会直前にも北京市北西部にある四通橋で、「独裁者習近平を罷免せよ」「文革ではなく改革を、PCR検査ではなく食糧を、ロックダウンではなく自由」などと赤い文字で書かれた横断幕が掲げられる出来事があった。

 同様の出来事は広州市やチベット自治区ラサ市などでも表面化しており、こういった抗議活動は氷山の一角かもしれない。

Text by 本田英寿