暖房も水も電力もない冬に備えるキーウ

Andrew Kravchenko / AP Photo

[キーウ・ウクライナ 7日 AP] – ロシア軍によるウクライナのエネルギー施設への攻撃が今後も続けば、凍てつくような寒い冬に電力も水も暖房もない状況は避けられない。ウクライナの首都キーウの市長は住民に対し、過酷を極めるこの冬に備えるよう警戒を促した。

 ヴィタリー・クリチコ市長は国営メディアに対し「この状況を避けるために、あらゆる対策を行っています。しかし私たちの敵は、この都市から暖房や電気、水道供給を奪い、死に追いやるためのあらゆる手立てを講じています。この国の未来や私たち一人ひとりの将来は、異常なこの状況に対していかに備えるかにかかっているのです」と述べる。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は11月6日、毎夜行う国民へのビデオ演説のなかで、およそ450万人が電力のない生活を強いられていることに言及した。大統領は国民に対し「苦難に耐えてこの冬を生き抜き、春には今よりもさらに強くなっていなければならない」と訴えた。

 この1ヶ月にわたり、ロシア軍はウクライナのエネルギー施設を集中的に攻撃している。その結果、国内全域が電力不足に陥り、計画停電の実施を余儀なくされている。キーウでは、市内の一部や周辺地域において1時間ごとの計画停電が行われた。

 ウクライナの国営送電会社ウクレネルゴによると、計画停電はほかにも、チェルニーヒウやチェルカッシィ、ジトーミル、スームィ、ハルキウ、ポルタバ地域において予定されていたという。

 キーウでは、およそ1000ヶ所の暖房拠点を市内に設置する準備を進めているが、300万人規模の都市に十分な数であるか明確ではない。

 ロシア軍による首都キーウへの攻撃が激化する一方で、ウクライナ軍は南部での攻勢を強めている。ウクライナ軍は6日、ロシア占領下の都市ヘルソンの住民の携帯電話に一刻も早く避難することを勧める警告メッセージが配信されたと発表した。ロシア軍兵士は住民に対し、ウクライナ軍による大規模攻撃が計画されていると注意喚起し、市内の右岸地域へと即座に避難するよう伝えた。

 ロシア軍は、侵攻直後に占拠された南部の都市ヘルソンを取り戻そうとするウクライナ軍の反転攻勢に備えている。ロシアは9月にヘルソンを含む4地域を違法に併合し、全4州への戒厳令導入を宣言した。ヘルソンに置かれたロシア行政府は、すでに数万人の住民を市外へと避難させている。

 ロシアはこれまでにヘルソンを「占領し、撤退する」ことを同時に繰り返してきた。南部戦線のウクライナ部隊で報道官を務めるナターシャ・フメニュク氏によると、ロシア軍はウクライナ人に対し、自分たちが撤退していると見せかけようとしているが、実際には防備を固めているのだという。同氏は「かなり強力に守りを固めている防衛部隊があります。そこには相当量の装備が残されており、射撃陣地が築かれています」と指摘する。

 ロシア軍は、東部の激戦地でも防備を固めている。ロシア政府によるドネツク州への一方的な併合と戒厳令の導入により、すでに厳しい環境下に置かれていた住民とウクライナ防衛部隊を取り巻く状況は、さらに悪化している。

 ドネツク州のパブロ・キリレンコ知事は、バフムート市と近郊の町ソレダルに電力供給を行う発電所が攻撃され、ほぼ全壊したことを明らかにした。この爆撃により1人が犠牲となり、3人が負傷したと5日夜に発表された。

 キリレンコ知事は国営放送局に対して「1時間ごとでなくとも毎日絶え間なく破壊が進められている」と話している。

 ドネツク州の一部地域は、2月末にロシアによるウクライナ侵攻が開始される8年近く前から、親ロシア派分離主義勢力によって支配されてきた。分離主義派が共和国と称する地域を防衛することは、ロシアのプーチン大統領が侵攻を正当化する理由のひとつであり、州全域を占領下に置くためにロシア軍兵士は数ヶ月を費やしてきた。

 ウクライナ政府の発表によると、ロシアは今月ミサイル4発と19機による空爆を行い、35以上の村を攻撃した。その範囲は北東部の都市チェルニーヒウとハルキウから、南部の都市ヘルソンとムィコラーイウまでの9つの州におよぶ。この爆撃により2人が犠牲となり、6人が負傷した。

 地元メディアによると、ドネツク州バフムートでは残っている住民1万5000人が、連日の絶え間ない爆撃のなか、水も電力もない状態で暮らしているという。この地域は、数ヶ月前より爆撃にさらされていたものの、ハルキウやヘルソン地域でウクライナ軍の反転攻勢を受けたロシア軍が後退を強いられて以降、攻撃が激化している。

 最前線の町バフムート郊外では、ロシアの軍事会社「ワグネル・グループ」が暗躍し、雇い兵が攻撃の先頭に立っていると報告されている。

 これまで身を潜めてきた、同グループ創設者のエフゲニー・プリゴジン氏は、ロシアによるウクライナ戦争を機に存在感を高めている。プリゴジン氏は6日に発表した声明文のなかで、ロシア南西部の都市ベルゴロドとクルスクに「民兵訓練センター」を創設し、資金を援助することを明らかにした。ロシア領土での「妨害工作に対する戦い」には、地元住民を起用するのが最適であるとしている。同訓練センターは、サンクトペテルブルクにすでに開設したという軍事技術センターに付随するものだ。

 地方検察局の報道官ドミトロ・チュベンコ氏は「ロシア軍が撤退したハルキウで、集団墓地から発掘した遺体の身元特定作業が当局によって行われた」と話す。イジュームにある集団墓地から掘り出された450の遺体からはDNAサンプルが収集されたものの、親族のサンプルとの照合が必要であり、現時点でサンプルを提出しているのは80人にすぎないという。

By SAM MEDNICK Associated Press
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP